『search/サーチ』(WOWOW)

searching/102分 2018年 アメリカ=スクリーン・ジェムズ 日本配給ソニー・ピクチャーズ

最初から最後までパソコン画面の中だけでストーリーが展開するという異色のサスペンス映画。
映画表現の実験的手法はヒッチコックから最近のシリーズ作品『キューブ』(1997〜2004年)、『マトリックス』(1999〜2003年)まで、ある程度やり尽くされたように思っていたが、想像を上回る斬新かつ野心的な作品である。

開巻早々、WindowsXPの画面に主人公デヴィッド・キム(ジョン・チョー)、妻パム(サラ・ソーン)、一人娘の動画が映し出される。
娘の成長とともにパソコンがバージョンアップし、WindowsからMacに変わって、画質がクリアになっていくにつれ、動画の中の妻が病気にかかってどんどんやつれていく。

このデジタル技術の進歩と家族の歴史をリンクさせた最初の10分間が実に見事。
劇場ではなくテレビで観たためか、自分のパソコンでキム一家の動画を見ているのかのような錯覚に陥り、キム一家の人々のキャラクターがすっかり頭に刷り込まれてしまった。

妻が亡くなり、高校生に成長した一人娘マーゴット(ミシェル・ラー)は、どこの家庭でもあるように、次第にキムと距離を置くようになる。
キムとマーゴットとの連絡方法はもっぱらFacebookのMessageになり、たまにキムがFaceTimeで会話をしようとすると、マーゴットが「なんで?」と露骨に拒否反応を示すところがリアルで生々しい。

そのマーゴットが「友だちの家に泊まる」と言ってFaceTimeを切った夜から家に戻ってこなくなり、連絡も途絶えてしまった。
いったい娘の身に何が起こったのか、キムは警察に捜査を依頼する一方、マーゴットがアクセスしていた Facebook、Instagram、Ustreamを検索し、ネット上の交際履歴を追い始める。

ここから先の展開はまさに一気呵成。
たたみかけるようにクライマックスへ持っていき、いったん解決したかと思わせておいて、エンディング間近で予想外のどんでん返しを見せる。

ネット全盛の時代になってから、現代人は大抵のことならネットでわかると思いがちで、それは錯覚だと警告を発する知識人も多い。
しかし、こういう映画を観ると、逆にネットこそいまや人間を知る上で大きな手がかりを与えてくれる重要なツールなのではないか、という気にさせられる。

一方、ネットを利用して自分の正体を隠し、マーゴットのような女子高生を毒牙にかけようとする人間たちも増えている。
本作で描かれた犯罪とストーリーをごくふつうの手法で映像化したら、これほどの怖さや生々しさは感じられなかっただろう。

そういう意味で、本作の成功を決定づけたのは、一にも二にもパソコン画面だけに限定した独自のアイデアである。
おれのような年寄りが考えている以上に、ネット社会がリアル社会と分かち難く結びついていることを改めて痛感させられた。

監督・脚本を手がけたアニーシュ・チャガンティはインド系アメリカ人で、これが長篇デビュー作。
次は何をやってくれるか、いまから新作が待ち遠しい。

オススメ度A。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)
※ビデオソフト無し

66『検察側の罪人』(2017年/東宝)D
65『モリのいる場所』(2018年/日活)B
64『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(2017年/米)B
63『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年/韓)A
62『ゲティ家の身代金』(2017年/米)B
61『ブルーサンダー 』(1983年/米)A
60『大脱獄』(1970年/米)C
59『七人の特命隊』(1968年/伊)B
58『ポランスキーの欲望の館』(1972年/伊、仏、西独)B
57『ロマン・ポランスキー 初めての告白』(2012年/英、伊、独)B
56『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017年/米)A
55『ウインド・リバー』(2017年/米)A
54『アメリカの友人』(1977年/西独、仏)A
53『ナッシュビル』(1976年/米)A
52『ゴッホ 最後の手紙』(2017年/波、英、米)A
51『ボビー・フィッシャーを探して』(1993年/米)B
50『愛の嵐』(1975年/伊)B
49『テナント 恐怖を借りた男』(1976年/仏)B
48『友罪』(2018年/ギャガ)D
47『空飛ぶタイヤ』(2018年/松竹)B
46『十一人の侍』(1967年/東映)A
45『十七人の忍者 大血戦』(1966年/東映)C※
44『十七人の忍者』(1963年/東映)C
43『ラプラスの魔女』(2016年/東宝)C
42『真夏の方程式』(2013年/東宝)A
41『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018年/米)B
40『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年/米)B
39『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年/米)C
38『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』(2017年/米)D
37『デッドプール2』(2018年/米)C
36『スキャナーズ3』(1991年/加)C
35『スキャナーズ2』(1991年/米、加、日)C
34『スキャナーズ』(1981年/加)B
33『エマニエル夫人』(1974年/仏)C
32『死刑台のエレベーター』(1958年/仏)B
31『マッケンナの黄金』(1969年/米)C
30『勇気ある追跡』(1969年/米)C
29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2012年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B※

1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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