『集団奉行所破り』(TOEIch)

『集団奉行所破り』(TOEIch)
(1964年 東映 90分 モノクロ)

 前項『大殺陣』と同じ年に公開された作品で、昨夏〈東映チャンネル〉の「集団時代劇特集」の1本として放送された。
 大阪の庶民に慕われた廻船問屋の七回忌を盛大に営むため、その費用を奉行所から強奪しようとする8人の子分たちの活躍を描いている。

 海賊のまとめ役は金子信雄、その配下に里見浩太朗、大友柳太郎、内田良平、などなど。
 何か事あれば彼らをしょっぴこうと狙っている同心が佐藤慶と、なかなかアクの強い顔ぶれが並んでいる。

 里見浩太朗が珍しく一昔前の火野正平、いまで言えば実在の羽賀研二みたいな女たらしの詐欺師を演じているが、昔はこういうコミカルな役もよくやっていたのだろうか。
 その里見が口説こうとしていた娘・桜町弘子が実は佐藤の娘で、その裏側にはさらに泣かせる経緯があった、という脚本もよく練り込まれている。

 しかし、つまらなくはないのだが、どうもピンとこないのは何故なのか、と思いながら見ていて、この映画には回想シーンがまったくないからだ、ということに気がついた。
 元海賊が奉行にリベンジする話なのに、その元海賊がかつて活躍した場面も、彼らが頼りにしていた廻船問屋の姿も、一度も出てこないのである。

 クライマックスの「奉行所破り」はなかなかの迫力ながら、狙っていた金がなかったり、代わりに盗み出した機密書類が海で四散してしまったり、という展開はいかにも定石通り。
 『大殺陣』よりは面白くて、後味も悪くないんだけどね。

 オススメ度B。

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※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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