『キングスマン:ゴールデン・サークル』(WOWOW)

Kingsman:The Golden Circle

 最初は低予算で作られた小品が思わぬヒットを記録し、ゴマンと製作費をかけた続編が作られたら、案に相違してそれほど面白くならなかった、という映画は枚挙に暇がない。
 前作『キングスマン』(2015年)で大いに楽しませてくれたマシュー・ヴォーンが、引き続き監督・脚本・製作の1人3役を務めた本作もまたしかり、である。

 前作の一番の面白さは、トボけた師匠〝ガラハッド〟(コリン・ファース)が跳ねっ返りの弟子〝エグジー〟(ダロン・エガートン)に一から十までスパイ(キングスマン)の手ほどきを施す過程にあった。
 が、そのガラハッドは前作で死んでしまい、本作のエグジーは最初から一人前のキングスマンという前提になっているので、どうやって面白く見せるのか、いささか心配ではあったんですけどね。

 今回は開巻早々、キングスマンの落ちこぼれチャーリー(エドワード・ホルクロフト)により、キングスマンの本部やサビルローのテーラーが爆破されてしまう。
 チャーリーの背後にいる黒幕は、カンボジアに秘密工場を持つ国際的麻薬密輸組織ゴールデン・サークルの女ボス、ポピー・アダムス(ジュリアン・ムーア)だった。

 このポピーが弾けたキャラクターで、裏切り者や役立たずの部下はミンチにしたあげく、ハンバーガーにして別の部下に食べさせているというまことに悪趣味なオバサン。
 なお、この人肉ミンチの元ネタは、ジェームズ・グリッケンハウスの『エクスタミネーター』(1980年)。

 本部もテーラーも失ったエグジーがこのゴールデン・サークルに対抗するべく手を組むのが、アメリカのケンタッキー州でウイスキー製造工場に見せかけたスパイ組織ステートマン。
 ここのボスがシャンパン(ジェフ・ブリッジス)で、部下がウイスキー(ペドロ・パスカル)やジンジャーエール(ハリー・ベリー)と、ベタなネーミングが笑わせる。

 そして、このステートマンの地下に、なんと死んだはずのガラハッドが匿われていた、というあたりまでは、登場人物の多さや賑やかさ、彼らを巧妙に配置した筋立てと、懸命に知恵を絞っているヴォーンの苦労がうかがえる。
 が、ギャグや見せ場をふんだんに盛り込んでいる割りに、どれもこれもいまひとつパンチに乏しい。

 上映時間が2時間半近いのも、この種の映画としては長過ぎ、後半はダラダラしている印象が強かった。
 エンディングを見る限り、どうやら第3作も作られそうな雰囲気だが、次回は2時間前後でビシッとまとめてほしいね。

 オススメ度C。

(2017年 イギリス、アメリカ=20世紀FOX/日本公開2018年 141分 PG12)

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2018リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

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134『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997年/英、米)B
133『007 ゴールデンアイ』(1995年/英、米)A
132『ジオストーム』(2017年/米)C
131『ザ・サークル』(2017年/米)C
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128『博徒仁義 盃』(1970年/東映)C
127『ビジランテ』(2017年/東京テアトル)A
126『ジョーカー・ゲーム』(2015年/東宝)C
125『007 消されたライセンス』(1989年/英、米)A
124『007 リビング・デイライツ』(1987年/英、米)B
123『007 オクトパシー』(1983年/英、米)C
122『007 黄金銃を持つ男』(1974年/英、米)C
121『チェンジリング』(2008年/米)A
120『エル ELLE』(2016年/仏、白、独)A
119『女王陛下の007』(1969年/英、米)C
118『007 スペクター』(2015年/英、米)B
117『007 慰めの報酬』(2008年/英、米)C
116『007 カジノ・ロワイヤル』(2006年/英、米)C
115『暴走パニック 大激突』(1976年/東映)C
114『お尋ね者七人』(1966年/東映)B
113『忍者狩り』(1964年/東映)C
112『十兵衛暗殺剣』(1964年/東映)B
111『十三人の刺客』(1963年/東映)B
110『地上最大のショウ』(1952年/米)A
109『スリーピー・ホロウ』(1999年/米)A
108『モネ・ゲーム』(2012年/米)C
107『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』(2017年/米)A
106『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』(2016年/米)C
105『ジェイソン・ボーン』(2016年/米)A
104『ボーン・レガシー』(2012年/米)C
103『ハンス・ジマー ライブ・イン・プラハ』(2017年/米)B
102『夕陽の群盗』(1972年/米)B
101『アウトロー』(1976年/米)A
100『スラップ・ショット』(1977年/米)B
99『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』(2017年/東宝)C
98『女囚さそり 701号怨み節』(1973年/東映)B
97『女囚さそり けもの部屋』(1973年/東映)B
96『女囚さそり 第41雑居房』(1972年/東映)B
95『女囚701号 さそり』(1972年/東映)A
94『風来坊探偵 赤い谷の惨劇』(1961年/東映)C
93『三度目の殺人』(2017年/東宝)C
92『スーパー・チューズデー ~正義を売った日~』(2011年/米)B
91『エイリアン:コヴェナント』(2017年/米)B
90『プロメテウス』(2012年/米)B
89『アンドロメダ… 』(1971年/米)A
88『亡霊怪猫屋敷』(1958年/新東宝)B
87『怪談かさねが渕 』(1957年/新東宝)B
86『一寸法師』(1955年/新東宝)C
85『黒蜥蜴』(1962年/大映)B
84『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』(1976年/日活)D
83『狼やくざ 葬いは俺が出す』(1972年/東映)B
82『博徒七人』(1966年/東映)A
81『泥棒成金』(1955年/米)A
80『スペース カウボーイ』(2000年/米)C
79『ソイレント・グリーン』(1973年/米)B
78『狼は天使の匂い』(1972年/仏)B
77『さらば友よ』(1968年/仏、伊)B
76『傷だらけの栄光』(1956年/米)A
75『ハンズ・オブ・ストーン』(2016年/米、巴)B
74『ダンケルク』(2017年/英、米、仏、蘭)B
73『墨攻』(2006年/中、日、香、韓) A
72『関ヶ原』(2017年/東宝)
71『後妻業の女』(2016年/東宝)B
70『ショートウェーブ』(2016年/米)D
69『Uターン』(1997年/米)B
68『ミラーズ・クロッシング』(1990年/米)C
67『シザーハンズ』(1990年/米)A
66『グーニーズ』(1985年/米)B
65『ワンダーウーマン』(2017年/米)B
64『ハクソー・リッジ』(2016年/米)A
63『リリーのすべて』(2016年/米)A
62『永い言い訳』(2016年/アスミック・エース)A
61『強盗放火殺人囚』(1975年/東映)C
60『暴動島根刑務所』(1975年/東映)B
59『脱獄広島殺人囚』(1974年/東映)A
58『893愚連隊』(1966年/東映)B
57『妖術武芸帳』(1969年/TBS、東映)B
56『猿の惑星』(1968年/米)A
55『アンドロメダ・ストレイン』(2008年/米)C
54『ヘイル、シーザー!』(2016年/米)B
53『パトリオット・デイ』(2016年/米)A
52『北陸代理戦争』(1977年/東映)A
51『博奕打ち外伝』(1972年/東映)B
50『玄海遊侠伝 破れかぶれ』(1970年/大映)B
49『暴力金脈』(1975年/東映)B
48『資金源強奪』(1975年/東映)B
47『ドライヴ』(2011年/米)C
46『バーニング・オーシャン』(2016年/米)A
45『追憶の森』(2015年/米)B
44『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年/ワーナー・ブラザース)B
43『パットン大戦車軍団』(1970年/米)B
42『レッズ』(1981年/米)B
41『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』(2016年/米)B
40『エクス・マキナ』(2015年/米)B
39『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999年/西)B
38『ムーンライト』(2016年/米)B
37『アメリカン・バーニング』(2017年/米)B
36『セル』(2017年/米)C
35『トンネル 闇に鎖された男』(2017年/韓)B
34『弁護人』(2013年/韓国)A
33『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年/クロックワークス)A
32『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017年/東宝)B
31『南極料理人』(2009年/東京テアトル)B
30『沈黙 -サイレンス-』(2016年/米)B
29『メッセージ』(2016年/米)B
28『LOGAN/ローガン』(2017年/米)C
27『チャック~“ロッキー”になった男~』(2017年/アメリカ)B
26『ヒッチコック/トリュフォー』(2015年/米、仏)B
25『沖縄やくざ戦争』(1976年/東映)B
24『恐喝こそわが人生』(1968年/松竹)B
23『われに撃つ用意あり』(1990年/松竹)C
22『T2 トレインスポッティング』(2017年/英)A
21『ロスト・エモーション』(2016年/米)C
20『激流』(1994年/米)C
19『チザム』(1970年/米)B
18『駅馬車』(1939年/米)A
17『明日に処刑を…』(1972年/米)A
16『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(1988年/仏、伊)B
15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
13『サム・ペキンパー 情熱と美学』(2005年/独)B
12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
9『ネオン・デーモン』(2016年/仏、丁、米)D
8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
7『スティーブ・ジョブズ』(2015年/米)B
6『スノーデン』(2016年/米)A
5『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B
4『ドクター・ストレンジ』(2016年/米)B
3『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年/台、香)B
2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
1『日の名残り』(1993年/英、米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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