『スーパー・チューズデー ~正義を売った日~』(NHK-BS)

The Ides of March

 2004年の民主党大統領予備選挙にスタッフとして参加した劇作家ボー・ウィリモンの原作戯曲を、ジョージ・クルーニーが監督・脚本・製作・助演の1人4役で映画化した作品。
 主人公はライアン・ゴズリング演じる選挙広報官スティーヴン・マイヤーズで、クルーニーは大統領候補のペンシルバニア州知事マイク・モリスを演じている。

 マイヤーズは選挙戦の経験豊富なキャンペーン・マネージャー、ポール・ザラ(フィリップ・シーモア・ホフマン)の信頼も厚いモリス知事のスタッフのナンバー2。
 そのマイヤーズに対立候補の選挙参謀トム・ダフィ(ポール・ジアマッティ)が接触、モリスの敗北は目に見えているからいまのうちにこちらへ鞍替えしろ、と持ちかける。

 モリスの政治信条に心酔しているマイヤーズは、この引き抜きの誘いをきっぱりと拒絶。
 しかし、上司のザラには秘密にしたまま、インターンとして参加している女子大生のモリー(エヴァン・レイチェル・ウッド)とねんごろになる。

 ところが、そのモリーがモリス知事と「不適切な関係」を持ち、妊娠までしていることが発覚。
 それまで自分の恋人のように接していたモリーに対し、マイヤーズは職業意識をむき出しにして堕胎するよう説得、さらに選挙事務所も辞め、マスコミに嗅ぎ付けられないように州外へ引っ越せと迫る。

 その最中、マイヤーズとダフィが秘かに接触していたことを、なぜかタイムズの記者アイダ(マリサ・トメイ)が察知。
 いったい、誰がこのネタをリークしたのか、思い余って上司のザラにダフィと会っていたことを打ち明けると、「そのネタをリークしたのはおれだ」と、ザラの口から思わぬ真相が明らかにされる。

 こうしてモリスの事務所をクビになったマイヤーズに、逆転の一手はあるのか。
 最初から最後まで息つく間もなく見せるクルーニー監督の手腕はなかなかのもので、次から次へと新たな展開を見せる脚本もよくできている。

 クルーニー自身も加え、ゴズリング、ホフマン、マスコミ人種のいやらしさをうまく表現しているトメイまで、役者たちもなかなかの好演。
 だが、それだけに、収まるところに収まってしまうオチはいささか腰砕けと言わざるを得ない。

 オススメ度B。

(2011年 アメリカ=コロンビア・ピクチャーズ/日本配給2012年 松竹 98分)

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2018リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

91『エイリアン:コヴェナント』(2017年/米)B
90『プロメテウス』(2012年/米)B
89『アンドロメダ… 』(1971年/米)A
88『亡霊怪猫屋敷』(1958年/新東宝)B
87『怪談かさねが渕 』(1957年/新東宝)B
86『一寸法師』(1955年/新東宝)C
85『黒蜥蜴』(1962年/大映)B
84『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』(1976年/日活)D
83『狼やくざ 葬いは俺が出す』(1972年/東映)B
82『博徒七人』(1966年/東映)A
81『泥棒成金』(1955年/米)A
80『スペース カウボーイ』(2000年/米)C
79『ソイレント・グリーン』(1973年/米)B
78『狼は天使の匂い』(1972年/仏)B
77『さらば友よ』(1968年/仏、伊)B
76『傷だらけの栄光』(1956年/米)A
75『ハンズ・オブ・ストーン』(2016年/米、巴)B
74『ダンケルク』(2017年/英、米、仏、蘭)B
73『墨攻』(2006年/中、日、香、韓) A
72『関ヶ原』(2017年/東宝)
71『後妻業の女』(2016年/東宝)B
70『ショートウェーブ』(2016年/米)D
69『Uターン』(1997年/米)B
68『ミラーズ・クロッシング』(1990年/米)C
67『シザーハンズ』(1990年/米)A
66『グーニーズ』(1985年/米)B
65『ワンダーウーマン』(2017年/米)B
64『ハクソー・リッジ』(2016年/米)A
63『リリーのすべて』(2016年/米)A
62『永い言い訳』(2016年/アスミック・エース)A
61『強盗放火殺人囚』(1975年/東映)C
60『暴動島根刑務所』(1975年/東映)B
59『脱獄広島殺人囚』(1974年/東映)A
58『893愚連隊』(1966年/東映)B
57『妖術武芸帳』(1969年/TBS、東映)B
56『猿の惑星』(1968年/米)A
55『アンドロメダ・ストレイン』(2008年/米)C
54『ヘイル、シーザー!』(2016年/米)B
53『パトリオット・デイ』(2016年/米)A
52『北陸代理戦争』(1977年/東映)A
51『博奕打ち外伝』(1972年/東映)B
50『玄海遊侠伝 破れかぶれ』(1970年/大映)B
49『暴力金脈』(1975年/東映)B
48『資金源強奪』(1975年/東映)B
47『ドライヴ』(2011年/米)C
46『バーニング・オーシャン』(2016年/米)A
45『追憶の森』(2015年/米)B
44『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年/ワーナー・ブラザース)B
43『パットン大戦車軍団』(1970年/米)B
42『レッズ』(1981年/米)B
41『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』(2016年/米)B
40『エクス・マキナ』(2015年/米)B
39『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999年/西)B
38『ムーンライト』(2016年/米)B
37『アメリカン・バーニング』(2017年/米)B
36『セル』(2017年/米)C
35『トンネル 闇に鎖された男』(2017年/韓)B
34『弁護人』(2013年/韓国)A
33『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年/クロックワークス)A
32『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017年/東宝)B
31『南極料理人』(2009年/東京テアトル)B
30『沈黙 -サイレンス-』(2016年/米)B
29『メッセージ』(2016年/米)B
28『LOGAN/ローガン』(2017年/米)C
27『チャック~“ロッキー”になった男~』(2017年/アメリカ)B
26『ヒッチコック/トリュフォー』(2015年/米、仏)B
25『沖縄やくざ戦争』(1976年/東映)B
24『恐喝こそわが人生』(1968年/松竹)B
23『われに撃つ用意あり』(1990年/松竹)C
22『T2 トレインスポッティング』(2017年/英)A
21『ロスト・エモーション』(2016年/米)C
20『激流』(1994年/米)C
19『チザム』(1970年/米)B
18『駅馬車』(1939年/米)A
17『明日に処刑を…』(1972年/米)A
16『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(1988年/仏、伊)B
15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
13『サム・ペキンパー 情熱と美学』(2005年/独)B
12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
9『ネオン・デーモン』(2016年/仏、丁、米)D
8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
7『スティーブ・ジョブズ』(2015年/米)B
6『スノーデン』(2016年/米)A
5『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B
4『ドクター・ストレンジ』(2016年/米)B
3『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年/台、香)B
2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
1『日の名残り』(1993年/英、米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
先頭に戻る