『LOGAN/ローガン』(WOWOW)

Logan

 X-MENシリーズはスピンオフ企画も含めて全作品を見ているが、ウルヴァリンを主人公に据えた一連の作品はどれもこれも出来が悪く、劇場公開時にはほとんどスルーしている。
 とくに本作は監督が『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013年)のジェームズ・マンゴールドなのでさぞかしつまらないだろうなあ、と思ったら案の定(それでもWOWOWで初放送されたらすぐさま録画して見ないではいられなかったのですが)。

 舞台は国家によってミュータントのコミュニティーが壊滅させられた近未来。
 すっかり年老いたローガン(=ウルヴァリン、ヒュー・ジャックマン)は、テキサスでリムジン・タクシーの運転手をして生計を立てながら、石油精錬所に匿ったチャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート)の面倒を見ている。

 原作はマーベル・コミックのX-MENシリーズ・オルタナティヴ版の『オールドマン・ローガン』(2008年)で、一応オリジナルに忠実につくられているらしい。
 しかし、映画版のスピンオフ・シリーズでは『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(2009年)からウルヴァリンは不老不死になっているので、のっけから「話が違うぞ」と言いたくなる。

 精錬所を政府の秘密組織リーヴァーズに襲われたローガンとエグゼビアは、戦いに巻き込まれたローラ(ダフネ・キーン)という少女を連れて逃走。
 このローラもミュータントで、ローガンと同じ特殊金属アダマンチウムの爪を持ち、ローガンの遺伝子から兵器としてつくられたクローン人間であることがわかってくる。

 ローラが目指しているのは、自分と同じ人造ミュータントの子供たちが待つノースダコタのコミュニティー「エデン」。
 この旅路に付き添うローガンとの間に親子の情が芽生える、というのは定石通りの展開で、ここまではいいとしよう。

 マンゴールドはこのふたりの関係を『シェーン』(1953年)の主人公シェーン(アラン・ラッド)と彼を慕う少年ジョーイ(ブランドン・デ・ワイルド)になぞらえた。
 念の入ったことに、ローガンとローラがモーテルのテレビでこの名作西部劇を見る場面までつくっている。

 また、リーヴァーズのリーダー、ドナルド・ピアース(ボイド・ホルブルック)がミュータントの子供たちに殺される場面は、明らかに『11人のカウボーイ』(1971年)の模倣だ。
 さらに、エンディングではローラがまた『シェーン』を持ち出し、シェーンがジョーイに言い聞かせるセリフを暗唱させていて、これはあまりにくどい。

 マンゴールドはよっぽど西部劇が好きらしく、『コップ・ランド』(1997年)でも『誇り高き男』(1956年)の設定を趣向を変えて流用していた。
 『誇り高き男』ではロバート・ライアンが失明の恐怖と戦いながら悪漢たちをなぎ倒していくのだが、『コップ・ランド』ではシルヴェスター・スタローンが刻々と進む難聴に悩まされながらハーヴェイ・カイテルとの対決に臨む。

 監督本人はご満悦なのだろうが、それ以前に演出がメリハリに乏しく、パンチ不足なのだから意味がない。 
 オススメ度C。

(2017年 アメリカ=20世紀FOX 137分)

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※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

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20『激流』(1994年/米)C
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15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
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12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
9『ネオン・デーモン』(2016年/仏、丁、米)D
8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
7『スティーブ・ジョブズ』(2015年/米)B
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2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
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スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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