
107分 2024年 スペイン=ワーナー・ブラザース、アメリカ=ソニー・ピクチャーズ・クラシックス
敬愛するペドロ・アルモドバル(監督、脚本)が初めて英語圏で製作した長編映画。
癌で余命幾ばくもない元戦場記者マーサ(ティルダ・スウィントン)と、彼女に最期を看取るよう頼まれた作家イングリッド(ジュリアン・ムーア)の友情が描かれる。
かつてニューヨーク・タイムズの記者として成功を収め、名声を得たマーサは今、癌で死ぬ前に自ら命を絶とうと決めている。
彼女には10代の頃、ベトナム帰還兵との間にできた一人娘がいたが、親子関係は断絶しており、見舞いにもやってこない。
そんなマーサは、たまたま見舞いに訪れたイングリッドに、自分と同居して隣の部屋で生活してほしいと依頼する。
自分はその間にネットで手に入れた安楽死用の薬で自殺する、自分の死を見届けて、離ればなれになっている娘に連絡してくれないか、というのだ。
イングリッドがマーサの希望を叶えれば、法律的には自殺幇助であり、れっきとした犯罪になる。
しかし、たったひとりの肉親に見離された親友の最後の願いを聞くことは、人間として正しいのか、間違っているのか。
誰にも容易には答えの出せない根源的テーマを、アルモドバルはいつもの優しく牧歌的なタッチで淡々と物語ってゆく。
老いとパンデミックの問題にも言及しており、マーサとイングリッドの両方と関係を持っていた男性の作家デイミアン(ジョン・タトゥーロ)のセリフが印象的だ。
「トシを取ってパンデミックを経験してから、新しい映画や音楽に対する興味を失ってしまった。
本だけは読んでいるが、それは講演の仕事のためだ」
この言葉に、そう言えば自分も、と思い当たる高齢者は少なくないだろう。
僕自身、このまま漫然と老いていってはいけない、まだ何かできることがあるはずだ、と改めて気づかされた。
胸にズシリと重いものを残す作品だが、後味はやはり爽やか。
もっとトシを取ったら、また見直してみたい。
オススメ度A。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑