『国宝』🤗😱

175分 東宝 2025年
@109シネマズ木場 スクリーン1 2025年9月28日PM3:25~

何の予定もなかった先月28日の日曜、まだ手術跡の抜糸が済んでいなかったためにサイクリングに出かけることもできず、どうしようかなぁ、と思っていたら、知人友人からこんな声アリ。
『国宝』面白いですよ、絶対に映画館で観たほうがいいですよ、赤坂さんなら刺さりますよ!

そこまで言われるのならと、ネットで都内の上映館を検索したら、日曜とあって新宿、池袋、有楽町などのいい時間はどこも満席。
こういう時、いつも比較的空いている穴場が109シネマズ木場で、今回も一番大きなスクリーン1の前から8列目の比較的いい席が取れた。

吉沢亮、横浜流星が吹き替えなしで演じている歌舞伎の場面は確かに圧巻である。
最初に二人が共演してブレークする『二人藤娘』をはじめ、ストーリーのヤマ場で繰り返される『二人娘道成寺』『曽根崎心中』がさらに素晴らしく迫力満点。

ところが、そうした歌舞伎のパフォーマンスと芸術性を主体とした前半から後半に入ると、見せ方よりも筋立てで引っ張るスタイルに変わる。
野球で言えばシーソーゲームのような逆転に次ぐ逆転の繰り返しで、慌ただしく先を急いでいる印象が強い。

成功と挫折、友情と裏切り、転落と復活など、メロドラマ的要素を散りばめ過ぎて、きっちり回収されていない布石も少なくない。
と、こちらが「巻け、巻け」と心の内でつぶやいていた矢先、クライマックスで吉沢亮が熱演する『鷺娘』が画面いっぱいに映し出される。

すると、途端にそれまでの不満がすべて吹き飛び、思わず身を乗り出して見入られないではいられなくなるのだ。
吉沢の演技、李相日の演出もさりながら、ソフィアン・エル・フィニのキャメラ、中村裕樹のライティングが素晴らしく、21世紀の映像芸術のひとつの頂点を示していると言っても過言ではない。

こういう感動は映画館で観なければ味わえないだろう、と改めて思いました。
正直、もうちょっと短くてもいいんじゃないかなぁ、とは思ったけど。

オススメ度A。

A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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