『江戸川乱歩の美女シリーズ25 黒真珠の美女 心理試験』(BS松竹東急)🤨

約109分 初放送:1985年8月3日PM9:02〜 製作:テレビ朝日、松竹
BS松竹東急 再放送:2025年6月30日PM6:00〜

本シリーズの天知小五郎編最終作で、初放送字にはシリーズ最高の視聴率26.3%を記録した。
というから、面白さもシリーズ最高かと思いきや、はっきり言って平均レベルの上よりも下に近い出来栄えである。

「美女」岡江久美子は謎の画商で、秘かなルートから入手したというゴッホの幻の名画を披露し、一躍マスコミの寵児となる。
そうした中、天知小五郎の元に現金100万円が郵便で届けられ、幻の名画の入手先を探ってほしい、という依頼の電話がかかってくる。

天知が調査に乗り出すと、幻の名画を偽物と断じていたコレクター・高橋昌也が自宅で死体となって発見された。
果たして犯人は誰か、名画が偽物だとしたら、本物はどこにあるのか。

こう書くと面白いようだが、山下六合雄の脚本はなかなか最初の殺人が起こらず、貞永方久の演出もまったりしていてメリハリに乏しい。
天知が荒井注警部や事務所のスタッフとババ抜きに興じている場面、カメラマン貞永敏(方久の息子)のヌード撮影を長々と映しているシーンなど、本筋とは何の関係もないくだりに時間をかけ過ぎている。

しかも、最初に電話をかけてきた依頼主は誰だったのか、高橋家の家政婦・東千晃につきまとう元夫・伊藤克信の目的は何だったのか、回収されないままの布石もいっぱい。
ついでに書くと、原作『心理試験』のどこが下敷きになっているのかもよくわからない。

このシリーズはやはり、悪趣味ぶり、デタラメぶりを前面に打ち出し、大上段に振りかぶった演出で見せる井上梅次のテイストがあってこそ。
貞永も松竹では多数の作品を監督したことで知られるが、本シリーズでは井上ワールドをしのぐ世界観を構築できなかったというほかない。

なお、本シリーズの再放送もこれにて終了。
それと同時に、再放送された6月30日をもってBS松竹東急自体もJ:COMに吸収され、JCOM BSに名称を改めた。

オススメ度C。

A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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