『江戸川乱歩の美女シリーズ19 湖底の美女 湖畔亭事件』(BS松竹東急)🤨

約109分 初放送:1982年10月23日PM9:02〜 製作:テレビ朝日、松竹
BS松竹東急 再放送:2025年6月15日PM3:00〜

原作の『湖畔亭事件』は乱歩が結末を決めずに書き出し、行き当たりばったりに展開する手法が賛否両論を呼んだ。
主人公が温泉宿で女風呂をのぞき見し、脱衣所での殺人現場を目撃するが、のぞき見したことがバレては困るから通報しないでいたところ、翌朝に殺されたはずの死体がかき消えてしまい、宿の番頭や女中も何もなかったかのように振る舞っている、という出だしだけは面白かった記憶がある。

その原作とこのドラマ版の共通点は、舞台が湖畔の宿という設定だけ。
助手の五十嵐めぐみ、柏原貴を連れて白樺湖のホテルへ静養にやってきた天知小五郎が、水槽の中でショーを演じる山内絵美子が殺される事件に遭遇し、荒井注警部に協力を求められて捜査に乗り出す。

同じホテルには高名な画家・高橋昌也が「美女」のモデル・松原千明、娘・林未来、それに後妻・野川由美子と宿泊中。
その野川が高橋の弟子・伊東達広に言い寄られ、ベッドをともにしているところへ高橋が踏み込み、顧問弁護士・平田昭彦の立ち会いの元、一気に離婚を成立させてしまう。

実は、これは高橋の策略で、モデルの松原と結婚したいため、弟子の伊東をそそのかして野川と不倫の関係を持たせたのだった。
しかし、野川がおとなしく引っ込んでいるわけがなく、復讐を企てて平田を抱き込む、という展開はなかなか面白い。

ただし、本作にも、前作『化粧台の美女』と同様、看過できない欠点がある。
重要なカギとなる水中ショーの水槽はホテルの地下にあり、カメラを通して1階ロビーのモニターに映し出されるのだが、そのモニターと地下室とで水槽のサイズがあまりに異なっているのだ。

モニター画面に映る水槽が明らかに水族館で撮影されているのに対し、地下室の水槽はちょっと大きな海鮮居酒屋の水槽程度。
しかも、その中のマグロが、ドリフのコントか! とツッコミを入れたくなるほどのミエミエの作り物なんですよ。

そういう安っぽさ、バカバカしさとは裏腹に、犯人が白樺湖に入って拳銃自殺するシーンは非常に暗くて深刻で後味が悪い。
シナリオは『化粧台』と同じく宮川一郎が書いているが、どちらもスベっている感は否めません。

オススメ度C。

A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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