キュビズム展を見に行った🎨

セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホ、モネ、マティスなど、印象派の名画が好きなA先生は、当然のことながらキュビズムの作品にも目がない。
あんなわけのわからない絵のどこがいいんだと思われるかもしれないが、写真や映画の発達がそれまでの写実主義を衰退に追い込んだ20世紀初頭、絵画、彫刻にしかできない表現を追求した往年の作品からは独特の美と芸術性を感じる。

というわけで、上野の国立西洋美術館で開催中の〈パリ ポンピドゥーセンター キュビズム展 美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ〉は10月3日に始まったと知ったときから足を運ぼうと思っていた。
きょうは平日で雨だから、マティス展やモネ展ほど混んでいなかったけれど、それでも切符売り場には行列ができていて、なかなかの賑わいでした。

パブロ・ピカソ 『女性の胸像』 1907年6~7月
ジョルジュ・ブラック 『大きな裸婦』 1907年冬~1908年6月

初期のキュビズムを牽引したのがパブロ・ピカソとジュルジュ・ブラックであることはよく知られている。
自分たちを「ザイルで繋がれた登山家」と自称していた彼らは、意気投合し、互いに影響し合い過ぎたため、画風があまりにも酷似してしまい、どっちがどっちの絵だかわからなくなるほどだった。

ピカソ 『腰掛け椅子に座る女性』 1910年
ブラック 『ギターを持つ男性』 1914年春

確かに、1910年代のピカソとブラックの作品が並べて展示されているのを見ると、どっちがどっちの作品なんだか、プロでも判別し難いだろう。
そうした先達に触発されて独特の画風を示していたのが、キュビズムの第2世代とも言うべきフェルナン・レジェとフアン・グリス。

フェルナン・レジェ 『婚礼』 1911~1912年
フアン・グリス 『ギター』 1913年5月

次々に新たな才能を世に出したキュビズムは芸術界にとどまらず、当時の西欧諸国全体を巻き込んだ社会的ムーブメントへと発展していく。
その中心的存在がキュビズムを新たな段階へと進化させ、同時主義とオルフィスムの旗手となったロベール・ドローネーとその妻ソニア・ドローネー。

今回は、この時代の代表作ロベールの『パリ市』が日本で初めて公開された。
ソニアの『バル・ビュリエ』とともに、美術ファンにとっては見逃せない歴史的大作である。

ロベール・ドローネー 『パリ市』 1910~1912年
ソニア・ドローネー 『バル・ビュリエ』 1913年

そして、日本にも馴染みの深いマルク・シャガールもまた、キュビズムの洗礼を浴びた名画を残している。
鮮やかな色使いとファンタジックな画風で、硬質な冷たさを感じさせる初期のピカソやブラックとは一線を画しているところがシャガールらしい。

マルク・シャガール 『婚礼』 1911~1912年
シャガール 『墓地』 1917年

キュビズムはやがて、初期の前衛的芸術運動から、連綿と続く大きな潮流として広く一般社会へも浸透。
後進の画家たちは、リビングルームの観賞用として飾れるファッショナブルな作品を世に出すようになった。

レジェ 『タグボートの甲板』 1920年
ル・コルビュジエ 『水差しとコップ−空間の新しい世界』 1926年

こういう画風を見て、もうほとんど現代アートじゃないかと感じる人も多いでしょう。
全展示作品は絵画と彫刻が112点、書籍・パンフレット類が29点、西洋美術の歴史の勉強にもなり、非常に有意義なキュビズム展でした。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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