『クーリエ:最高機密の運び屋』(WOWOW)🤗

The Courier
112分 2020年 イギリス、アメリカ=ライオンズ・ゲートUK
日本公開:2021年 配給:キノフィルムズ

1960年のキューバ危機の最中、何度もモスクワに渡り、秘かにソ連の重要軍事機密を西側にもたらしていたイギリス人スパイの実話。
一般企業の平凡なセールスマンで、冷戦時代の国際情勢、MI6やCIAの思惑に翻弄されながら、黙々とスパイ活動を続けるグレヴィル・ウィンをベネディクト・カンバーバッチが熱演している。

ウィンは最初のうちこそ尻込みしていたが、モスクワで会ったGRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)の内通者オレグ・ペンコフスキー(メラーブ・ニニッゼ)との間に強固な友情を築き、使命感に突き動かされて運び屋をするようになる。
そのぶん、プレッシャーやストレスに苛まれ、夜に激しく妻シーラ(ジェシー・バックリー)の身体を求めたり、旅行先で息子アンドリュー(キーア・ヒルズ)を怒鳴りつけたりする描写がリアリティたっぷり。

やがて、ペンコフスキーの活動はKGBに知れるところとなり、妻子の目の前で逮捕されてしまう。
これで彼の利用価値は無くなった、ウィンの役目もおしまいだ、と告げたMI6とCIAの職員に、ウィンはペンコフスキーを家族と一緒に亡命させてほしい、自分がモスクワに行ってその手引きをする、と申し出るのだが。

非常に締まった実話モノで、後半からクライマックスは、観ていて辛くなるほど、迫力もリアリティもたっぷり。
ただ、悪役のフルシチョフが金正恩みたいにカリカチュアライズされていること、終盤に来てウィンとペンコフスキーの人物像がいかにも〝正義の味方〟っぽく持ち上げられているようにも見えることが、ちょっと気になりました。

オススメ度A。

A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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