『白蛇小町』(YouTube)😉

67分 モノクロ 1958年 大映

大映の『妖怪百物語』(1968年)、『妖怪大戦争』(同)でろくろ首を好演した毛利郁子をネットで検索したら、こんな妖怪時代劇がYouTubeにアップされているのを発見。
いかにも昭和30年代らしい1時間ちょっとの小品だったので、さっそくチェックしてみました。

開巻、安藤家の跡取り・新之助(和泉千太郎)が祝言の夜に花嫁の到着を待っていたところ、その嫁を乗せて安藤家へ向かっていた駕籠の前に、顔のただれた女の亡霊が出現。
嫁は亡霊にさらわれてしまい、もぬけの殻となった駕籠がやっと安藤家に到着したら、中からニョロニョロと白蛇が這い出した場面にタイトルがかぶさる、という出だしはなかなかうまい。

事の次第を知った安藤家の当主・左門(志摩靖彦)は、その亡霊はお巳年(みね、小町瑠美子)と言い、かつては自分が将来を誓い合った元腰元の女性だったが、親に身分の違いを理由に無理やり別れさせられて発狂し、花嫁衣裳を着て焼身自殺をしたのだと説明。
やがて、新之助の嫁に迎えるはずだった娘が死体で見つかり、その後、新之助も土蔵で首を吊った姿で発見される。

新之助の弟・源二郎(梅若正二)は左門の後添え・おすが(朝雲昭代)との折り合いが悪く、家を出て浪人生活を送っていた。
両国の見世物小屋で綱渡芸人をしているお菊(中村玉緒)に慕われる仲となっているが、楽屋に入り浸っている浪人、おすがの弟でもある矢島大介(千葉敏郎)もお菊を狙っている。

そのお菊の姉貴分で、大介の情婦でもある女芸人・お紺が毛利郁子。
彼女は蛇使い芸人で、自分の肌に蛇を這わせて恍惚の表情を浮かべるシーンが、大昔の映画ながらなかなか艶かしい。

当時25歳の若さだった毛利は、私生活でも蛇を飼っているほどの蛇好きで、撮影所にも“愛蛇”を持ち込み、スタッフを気味悪がらせるほどだったという。
だから10年後もろくろ首を演じ、監督に絶賛されるほどの好演を見せることができたのだろうか。

お話が進むにつれ、実はおすがと大介の姉弟が新之助を殺しており、源二郎も亡き者にして、大介が安藤家の養子となり、最終的には家を乗っ取ろうとしていることがわかってくる。
というわけで、本作のテイストは怪談映画というよりまともな時代劇のほうに近く、お化けや妖怪が出てくるのを期待していると肩透かしを食うでしょうね。

とはいえ、本作の毛利郁子の“蛇女”ぶりは意外に気持ち悪くなく、色気たっぷりで一見の価値がある。
のちに実生活で逮捕され、映画界を追われるような大事件を起こしたりしなければよかったのに。

オススメ度B。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2022リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

70『妖怪大戦争』(2005年/松竹)C
69『妖怪大戦争』(1968年/大映)B
68『妖怪百物語』(1968年/大映)B
67『レミニセンス』(2021年/米)C
66『張込み』(1958年/松竹)B
65『トップガン』(1986年/米)B
64『ゼロの焦点』(1961年/松竹)C
63『ザ・商社』(1980年/NHK)B
62『黒い画集 あるサラリーマンの証言』(1960年/東宝)B
61『地球の静止する日』(1951年/米)C
60『ウエストワールド』(1973年 /米)B
59『スーパーマン&ロイス』シーズン1(12)「たとえ死の谷を歩むとも」(2021年/米)B
58『スーパーマン&ロイス』シーズン1(11)「つかの間の追憶」(2021年/米)A
57『天使と悪魔』(2009年/米)A
56『キングコングの逆襲』(1967年/東宝)B
55『キング・コング』(1933年 /米)A
54『スーパーマン&ロイス』シーズン1(10)「母との再会」(2021年/米)A
53『スーパーマン&ロイス』シーズン1(9)「忠実なサブジェクト」(2021年/米)A
52『TOKYO VICE』#8剣ヶ峰(2022年/WOWOW、HBO Max)C
51『TOKYO VICE』#7不義不徳(2022年/WOWOW、HBO Max)B
50『ライトハウス』(2019年/米)C
49『TOKYO VICE』#6虚々実々(2022年/WOWOW、HBO Max)B
48『TOKYO VICE』#5因果応報(2022年/WOWOW、HBO Max)B
47『スーパーマン&ロイス』シーズン1(8)「無力な自分」(2021年/米)B
46『スーパーマン&ロイス』シーズン1(7)「鋼鉄の男」(2021年/米)B
45『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020年/米)A
44『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』(2018年/米)B
43『クワイエット・プレイス』(2018年/米)A
42『TOKYO VICE』#4虎穴虎子(2022年/WOWOW、HBO Max)B
41『TOKYO VICE』#3精神一到(2022年/WOWOW、HBO Max)C
40『ドニー・ダーコ』(2001年/米)B
39『スーパーマン&ロイス』シーズン1(6)「パワーの代償」(2021年/米)B
38『スーパーマン&ロイス』シーズン1(5)「スモールビルの良心」(2021年/米)B
37『TOKYO VICE』#2起死回生(2022年/WOWOW、HBO Max)B
36『TOKYO VICE』#1新聞記者(2022年/WOWOW、HBO Max)B
35『ふたりのウルトラマン』(2022年/NHK)A
34『スーパーマン&ロイス』シーズン1(4)「波乱の幕開け」(2021年/米)B
33『スーパーマン&ロイス』シーズン1(3)「人気者であることの特権」(2021年/米)B
32『カムバック・トゥ・ハリウッド‼︎』(2020年/米)B
31『すばらしき世界』(2021年/ワーナー・ブラザース)A
30『私は確信する』(2018年/仏、白)C
29『透明人間』(2020年/米)A
28『アナザーラウンド』(2020年/丁、蘭、瑞)A
27『スーパーマン&ロイス』シーズン1(2)「引き継いだもの」(2021年/米)A
26『スーパーマン&ロイス』シーズン1(1)「パワーの目覚め」(2021年/米)A
25『日本女侠伝 侠客芸者』(1969年/東映)A
24『昭和残俠伝 血染の唐獅子』(1967年/東映)B
23『大コメ騒動』(2021年/ラビットハウス)C
22『王の願い ハングルの始まり』(2019年/韓)A
21『フラッシュ・ゴードン』(1980年/米)B
20『タイムマシン』(2002年/米)C
19『アンダーウォーター』(2020年/米)C
18『グリーンランド−地球最後の2日間−』(2020年/米)B
17『潔白』(2020年/韓)B
16『ズーム/見えない参加者』(2020年/英)C
15『アオラレ』(2020年/米)B
14『21ブリッジ』(2019年/米)B
13『ムニュランガボ』(2007年/盧、米)C
12『ミナリ』(2020年/米)A
11『バイプレイヤーズ もしも100人の名脇役が映画を作ったら』(2021年/東宝映像事業部)C
10『死霊の罠』(1988年/ジョイパックフィルム)C
9『劇場版 奥様は、取扱注意』(2021年/東宝)C
8『VHSテープを巻き戻せ!』(2013年/米)A
7『キャノンフィルムズ爆走風雲録』(2014年/以)B
6『ある人質 生還までの398日』(2019年/丁、瑞、諾)A
5『1917 命をかけた伝令』(2020年/英、米)A
4『最後の決闘裁判』(2021年/英、米)B
3『そして誰もいなくなった』(2015年/英)A
2『食われる家族』(2020年/韓)C
1『藁にもすがる獣たち』(2020年/韓)B

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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