プーチン大統領がウクライナ侵攻に踏み切る前年、ロシア国内でプーチンに対する抗議活動を続けていた女性だけの政治団体を追ったドキュメンタリー。
このグループはもともと反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の支援団体だったが、プーチンによる法改正で団体が非合法化され、過激派グループと見なされるようになってしまい、男性幹部のほとんどが逮捕されたり、亡命したりしていなくなったため、女性だけが残されたのだという。
リーダー的役割を担うひとり、ルシア・シュテイン(制作当時25歳=上の画像)は「ナワリヌイの集会を利用して新型コロナウイルスを流行させようとした」という容疑をかけられて逮捕。
釈放後も足首に追跡装置をはめられ、常にロシア当局に監視される生活を強いられた。
選挙に立候補する権利を剥奪されたヴィオレッタ・グルディナ(同31歳)は、国民として当然の被選挙権を取り返そうと4000人の署名を集めたにもかかわらず、当局の審査会で「過激派の行動に加わった」として却下されてしまう。
すでにこのとき、グルディナは「プーチンは正気を失っている」と喝破していた。
シュテインにはマーシャ、ヴィオレッタにはナターシャという同性のパートナーがいて、私生活でも愛し合っている姿が明け透けに描かれる。
このあたりは、政治団体のドキュメンタリーというより、今時のロシア女性を描いた青春映画のようでもある。
なお、彼女たちの政治団体の名称は〈プッシー・ライオット〉、つまり「女性器の反乱」。
これは2011年にロシアで結成されたフェミニストのパンクロック・グループのバンド名でもあり、サッカーファンなら覚えているかもしれないが、2018年のロシアW杯ではグラウンドに乱入する騒ぎを起こした。
そういう有名な事件を知らずにシュテインたちが〈プッシー・ライオット〉と名乗っているとは思えないので、本家のバンドとはどのような関係にあるのか、そこを知りたかったところだ。
ひょっとしたら、このNHK-BS放送版(45分)から23分カットされたオリジナル版(68分)には、両者の関係に触れたくだりが含まれているのかもしれないが。
オススメ度B。