朗希はすごかったけど、高橋と赤星も頑張りました⚾️

東京ドームの新クリアビジョンは選手紹介の画面がやたらと大きくなった(画像は巨人・赤星)

「きょうの試合、載せる紙面がなくなりそうですよ」
東京ドームの巨人−ヤクルト戦が最終回の攻防に差し掛かったころ、背後の記者席に座っている記者さんにそんな声をかけられました。

その理由は言うまでもなく、〝令和の怪物〟ロッテ・佐々木朗希がこのとき、本拠地ZOZOマリンスタジアムでのオリックス戦で28年ぶりの完全試合を達成したため。
しかも、日本新の13連続奪三振を含む日本タイの19奪三振を記録していて、このどれかひとつだけでも大変な快挙なのに、プロ野球史上初、ひょっとしたら今後数十年は破られそうにない偉業。

これだけのことをやられたら、同じ日に他球場で繰り広げられた好ゲームはみんな霞んでしまいかねない。
最近、ネットでコメンテーターの仕事をしていてヒシヒシと感じるようになったんですが、これだけ様々なメディアが乱立するようになっても、ユーザーが集中するのはごく一部のビッグニュース、という傾向はまったく変わっていませんから。

そんな中にあっても、きょうの巨人の新人・赤星優志、ヤクルト7年目・高橋奎二の投げ合いは、プロ野球ファンにとって格好の酒の肴になる近ごろ屈指の投手戦でした。
二回に高橋が丸にソロ本塁打で1点を先制されるも、四回には赤星も山田に一発を献上して同点。

以後、どちらも粘り強い投球で、走者を出しながらも後続を断って追加点を与えない。
赤星、高橋のふたりがピンチをしのぐたび、3万人超の観衆から拍手が巻き起こり、自粛気味とはいえ、まとまると大きく聞こえる感嘆の声が場内に満ちた。

ともに先発ローテーション定着を目指す赤星は新人、高橋はすでに7年目。
絶対に先にマウンドを降りないぞ、という意地と意地とのぶつかり合いは、取材歴33年超のすれっからし野球記者にとっても見応えたっぷりだった。

打者・高橋の打席、赤星の投球を捕手・小林が捕逸した瞬間

そんな手に汗握る投手戦が動いたのは七回。
赤星が2死から7番・オスナを歩かせ、続く8番・古賀に左翼線を抜かれて二・三塁とされると、高津監督は9番・高橋に代打を出さず、そのまま打席に送った。

日本テレビの解説・江川卓氏曰く「この場面では代打は出せない、出しようがないんですよね、投手を代えたら打たれる可能性がありますから」。
ここでなんと、捕手・小林誠司が赤星のフォークを捕り損ねるタイムリー・パスボールでやらずもがなの勝ち越し点を献上。

その裏、高橋が一段とギアを上げ、球速150㎞台を連発して岡本和、丸、中島、ウォーカー、代打ウィーラー、中田を6者連続凡退に仕留めた投球は圧巻。
九回は自らの死球がらみで1死一・三塁のピンチを招きながらも、岡本和を投ゴロ、丸を二ゴロに打ち取って自身初の完投勝利を掴み取った。

高橋はヒーローインタビューで「最後は気合で投げました!」と会心の笑顔。
一方、赤星に代わってリモート取材に対応した桑田投手チーフコーチは、「ナイスピッチングでした」と新人の力投を高く評価していました。

こういう若さ溢れる投手戦の迫力は、球場のスタンドでなければ実感できないし、赤星は相当悔しかったに違いないので、高橋とのリターンマッチがいまから楽しみ。
ただ、コロナ禍が再拡大の兆しを見せている折、安易に生観戦は勧められませんけどね。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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