いつかまた、この若者たちとプロのグラウンドで会えたら⚾️

力投するセガサミー・横山

第92回都市対抗野球大会はきょうから準々決勝、その初戦でセガサミー(東京都)がJR東日本東北(仙台市)をくだし、2年連続ベスト4進出を決めました。
正直、7-2と大味な試合ではあったけれど、その中でも光ったのがプロ入りが決まっている横山楓(23)、これからプロを目指す中川智裕(24)の活躍。

横山は6点をリードした四回から2番手でマウンドに上がり、七回途中まで3回3分の1を1安打1失点と無難にまとめて見せた。
ソロ本塁打こそ許したものの、真っ直ぐの最高球速は147㎞に達し、しぶといJR東日本東北打線を抑えて、プロ入り前に社会人最後の1勝を挙げることに成功。

その横山をアシストしたのが、三回に満塁ホームランを放った中川。
もともと長打力には定評があり、近大時代には現阪神・佐藤輝明と三遊間コンビを組んで活躍していた186㎝、82㎏の大型遊撃手だ。

今年のドラフトでもプロ入りの候補に挙げられていたが、予選までは調子を落としていたこともあってか、残念ながら指名漏れ。
しかし、そこで自分の打撃フォームを見直し、ここまで試行錯誤を続けてきた努力が、この準々決勝の大舞台で実を結んだ。

佐藤輝の今季前半の活躍には大いに刺激を受けたそうで、「来年のドラフトを目指して頑張れ」と元広島の4番・西田真二監督にも励まされているという。
ヒーローインタビューでは堂々と「チャンスで回ってこいと思っていました」と語るなど、性格的にもプロ向きのスラッガーである。

試合後、ヒーローインタビューを受けるセガサミー・中川

そう言えば、きのうの2回戦に先発、6回8安打1失点で勝ち投手となり、ベスト8進出を決めた東京ガスの高橋佑樹(24)も、試合後の囲み取材では熱い〝ヤクルト愛〟を語っていました。
小6のころにスワローズジュニアに所属していた筋金入りの燕党で、この都市対抗でも高津監督のキャッチフレーズ「絶対大丈夫」と書かれたタオルをベンチに持参。

都市対抗に出る前は日本シリーズも全戦観戦したといい、囲み取材でどんなところが印象に残ったかと聞かれると、戸惑いながらも数々の名場面を列挙している。
高津監督が2度救援に失敗したマクガフを第6戦でも抑えで起用した信頼感、その第6戦の延長12回に〝代打の神様〟川端が決勝点をたたき出した勝負強さなど、ツボを押さえたコメントを連発。

今年のドラフトのころは調子を落としていて、指名されなくてもそれほどショックは感じなかったそうだが、そういう言葉がかえって強烈なプロ志向とヤクルトへの憧れを感じさせる。
先日、「いまでもプロに行けるのなら行きたい」と言っていた阿部博光(25・日立製作所補強選手=SUBARU)と同様、僕のような年寄りのライターの耳にも切実に響くコメントでした。

野球人口の減少が叫ばれているこの時代に、まだこうしてプロを目指している若者たちがいる。
いつか、彼らとまたプロのグラウンドで会えたらいいな。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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