『悔いなきわが映画人生』岡田茂🤔😞

466ページ 財界研究所 第1刷:2001年6月30日 定価1800円

このところ、立て続けに読んだ元東映社長・岡田茂関連の本の中では、正直言って、最も中身に乏しい。
466ページもある大型書籍で、こういう体裁だから、てっきり『昭和の劇 映画脚本家 笠原和夫』(2002年/太田出版)や『映画監督 深作欣二』(2003年/ワイズ出版)のように読み応えがあって資料性も高い本かと思った(ただし、この2冊より本書の出版のほうが早いから、本書がスタイルを真似したわけではないのだが)。

3部構成で第1部は自伝になっているが、これは前掲書『波乱万丈の映画人生 岡田茂自伝』(2004年/角川書店)とほとんど同じ内容(ただし、これも本書の出版のほうが早いから、批判するには当たらないのだが)。
第2部は財界人や映画人との対談で、旭化成会長・山口信夫、東宝会長・松岡功、女優・岩下志麻、名取裕子など、豪華な顔ぶれをそろえているものの、内容はほとんどいわゆる〝お手盛り対談〟にとどまっている。

第3部は岡田個人の年譜、及び岡田が関わった映画のリストで、全465ページ中127ページを占めている。
が、いまとなってはネットで検索できる程度の資料性しかなく、本を分厚くするために最後にくっつけたとしか思えない。

そうした中、この本でしか読めない貴重な証言がひとつだけある。
第2部の対談篇で、深作欣二が岡田に対し、こういう趣旨の質問している。

普通、映画界に入る前には何か非常に心に止まった映画があり、それがこの世界に迷い込むきっかけになったといったようなことが書かれているものだが、本書に収められた岡田社長の記事にはそれが書かれていない。
だから、どういう映画が好きだったのか、改めて訊いてみたい。

この深作の質問に対し、岡田は「松竹のメロドラマがよかったよ」といった平凡な答えしか返していない。
別にはぐらかしているわけではなく、どうやら実際に、心が震えるほど感動した映画はないらしいのだ。

「(映画は)嫌いじゃないよ、嫌いじゃないけど、溺れるほどじゃなかったよ。
この仕事(社長、プロデューサー業)を続けてこれた基礎はどういうところにあるかというと、ある瞬間、冷静になれることなんだよ」

以下、岡田社長が少々ムキになっていると思われる詳しい言い分は本書に当たられたい。
それを深作監督がどんな顔して聞いていたのか、ご存命なら僕が訊いてみたい、と思いました。

🤔😞

2021読書目録
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16『映画界のドン 岡田茂の活動屋人生』文化通信社編著(2012年/ヤマハミュージックメディア)😁😳🤓🤔
15『波乱万丈の映画人生 岡田茂自伝』岡田茂(2004年/角川書店)😁😳🤓
14『戦前昭和の猟奇事件』小池新(2021年/文藝春秋)😁😳😱🤔🤓
13『喰うか喰われるか 私の山口組体験』溝口敦(2021年/講談社)😁😳😱🤔🤓
12『野球王タイ・カップ自伝』タイ・カップ、アル・スタンプ著、内村祐之訳(1971年/ベースボール・マガジン社)😁😳🤣🤔🤓
11『ラッパと呼ばれた男 映画プロデューサー永田雅一』鈴木晰也(1990年/キネマ旬報社)※😁😳🤓
10『一業一人伝 永田雅一』田中純一郎(1962年/時事通信社)😁😳🤓
9『無名の開幕投手 高橋ユニオンズエース・滝良彦の軌跡』佐藤啓(2020年/桜山社)😁🤓
8『臨場』横山秀夫(2007年/光文社)😁😢
7『第三の時効』横山秀夫(2003年/集英社)😁😳
6『顔 FACE』横山秀夫(2002年/徳間書店)😁😢
5『陰の季節』横山秀夫(1998年/文藝春秋)😁😢🤓
4『飼う人』柳美里(2021年/文藝春秋)😁😭🤔🤓
3『JR上野駅公園口』柳美里(2014年/河出書房新社)😁😭🤔🤓
2『芸人人語』太田光(2020年/朝日新聞出版)😁🤣🤔🤓
1『銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』ジャレド・ダイアモンド著、倉骨彰訳(2000年/草思社)😁😳🤔🤓

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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