BS世界のドキュメンタリー『ニューヨーク LGBT運動の夜明け』(NHK-BS1)😉

Stonewall,Paving the Way to Gay Pride
45分(オリジナル版52分) 2020年 制作:フランス=Zadig Productions
初放送:2021年4月24日(土)午前0時10分〜0時55分

恥ずかしながら、大変不勉強にして、アメリカにおけるLGBTQ(同性愛者や性的マイノリティーの通称)の人権が社会的に認知される契機となった「ストーンウォールの反乱」(1969年)を、僕は本作を観るまでまったく知らなかった。
ただ、僕と同様、この種の史実に関する基本的知識が乏しい日本人は少なくないのではないだろうか。

同じ暴動事件でも、刑務所であればアッティカ(1971年)、黒人関連ならワッツ(1965年)、デトロイト(1967年)、ロサンゼルス(1992年)から最近のミネソタ反人種差別デモまで、日本でも大きく報じられたり、ハリウッド映画の題材にもなったりしているため、基礎的知識としてすぐ頭に思い浮かぶ。
しかし、ことLGBTQに関する歴史的事件となると、日本ではまだまだ周知されていないように感じる。

本作には、半世紀以上も前にストーンウォールの反乱に関わったり、目撃したりした当時のホモセクシャルやレズビアンの高齢者たちが、いかに自分たちが抑圧されてきたかを赤裸々に語っている。
かつて赤狩りが行われた1960年代の保守的なアメリカでは、同性愛者は精神異常者か犯罪者と見なされ、未成年なら保護者によって精神病院へ、成人なら警察によって逮捕される対象だった。

インタビューを受けたひとりは、保守的な土地柄で知られる故郷、ミネソタで同性愛者であることを隠し通し、大勢のゲイが集まるニューヨークへ移住し、グリニッチビレッジなどのバーで恋人を探したという。
しかし、そうしたゲイバーはほとんどがマフィアによって経営されていたため、客として集まる同性愛者が国家、警察、一般社会から反社会勢力の一部であると見なされる要因にもなった。

このようにLGBTが社会的弱者として極度に抑圧されていた最中、1969年6月28日、バー〈ストーンウォール・イン〉に踏み込んだ警察官と同性愛者との小競り合いが発火点となって、歴史に残る暴動が巻き起こった。
という背景と沿革はよくわかるのだが、肝心の反乱の中身についてはいまひとつ具体的内容に乏しい。

これは、制作したのがフランスのプロダクションで、視聴者がストーンウォールを基礎知識として知っていることを前提に、いささか高踏的な作り方をしていることに一因がある。
ストーンウォールの常連客グループで、反乱の際にも中心的役割を果たしたドラァグクイーン(女装パファーマー)について、言葉の意味すら説明されていないのはあまりに不親切である。

ただし、それ以上に、この反乱自体、いまだに謎に包まれた部分が多く、全容が解明されていないらしい。
2015年にはローランド・エメリッヒ監督でフィクション『ストーンウォール』として映画化されているが、史実の歪曲やホワイトウォッシュ(黒人や有色人種のキャラクターを白人に置き換えたり、白人俳優が演じたりすること)が目立ち、散々な評価に終わったという。

その点、このドキュメンタリー番組は日本人視聴者にとって、LGBTQについての理解を深める一助にはなるだろう。
しかし、歴史や社会的な位置付けについて、個人的にはかえってわからないことが増えたのも確かでした。

オススメ度B。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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