『アデル、ブルーは熱い色』😊

La vie d’Adèle – Chapitres 1 et 2
179分 2013年 フランス=ワイルドバンチ、カスフィルム
日本公開:2014年 コムストック・グループ

今年の話題作『燃ゆる女の肖像』(2019年)を観て思い出した2013年のカンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作品。
やはりれずビアン・カップルの葛藤、別離、成長を描いた約3時間の長編で、日本では2014年4月5日に劇場公開された。

封切り2日後、さっそくヒューマントラストシネマ有楽町へ12時20分の初回を観に行ったら、客席は八割方埋まっていた。
人気に火がついたのは、カンヌで審査委員長のスピルバーグが激賞してからで、作品だけでなく、カンヌ史上初めて主演女優のふたりにパルム・ドールが授与されたことも大きな話題となっている。

文学を勉強している高校生のアデル(アデル・エグザルホプロス)が美大生のエマ(レア・セドゥ)と出会い、愛し合って同棲を始める。
しかし、大学生となったアデルは幼稚園の教員の仕事に追われ始め、エマも画家として評価されてから多忙になり、すれ違いの生活が続いたあげくに破局。

本作が撮影された昨年、アデルは19歳、レアは27歳。
この若く美しいふたりの顔と身体が、開巻から徹底したクローズアップで映し出される。

カメラは文字通り舐めるように彼女たちを見つめ続け、執拗なまでにへばりついて一向に退くことがない。
正直、最初は少々息苦しさを覚えたが、しばらく観ているうち、女性同士に限らず、性愛を描く手法として極めて真っ当な正攻法のように思えてくる。

過激と評判になったレズのセックスシーンもしかりで、正面きって堂々と描かれたふたりの肉体と絡み合いが、映画的エロティシズムを越えた生命力すら感じさせるのだ。
実際、この場面の撮影は格闘シーンさながらのハードさで、アデルもレアも相当体力を消耗し、撮影後も筋肉痛に悩まされたという。

そんな圧倒的な性行為のシーンの積み重ねが、ふたりが喧嘩別れしたのち、後半になって利いてくる。
とくに、カフェにエマを呼び出し、復縁を迫るアデルが涙を鼻水を垂らしながらエマの指をしゃぶる場面には、思わず胸が熱くなり、ウルっときた。

終盤、小学校の教員にになったアデルは、大人の女性として束の間の恋を楽しむようになり、エマもすっかり売れっ子の画家に出世する。
こうしてふたりがそれぞれ別の道を歩むようになると、カメラはもはや彼女たちの顔や身体をクローズアップで映し出そうとはせず、常に一定の距離を置いた位置から、遠巻きにしてふたりの姿を追うようになる。

ラスト、カメラは通りの一角に踏みとどまる。
そして、「燃えるようなブルー」のワンピースに身を包み、歩み去ってゆくアデルの後ろ姿を見送るのだ。 

ノンフィクションで人間を描くことを生業としている人は見ておいたほうがいいかもしれない。
少なくとも、ぼくは勉強になりました。

なお、本作は女性器が映る露骨な性描写のため、世界各国の興行面では限定的な公開を強いられた(日本ではモザイクをかけてノーカット公開)。
主演女優のふたりは現在もテレビなどの表舞台で活躍中なのに、チェニジア人の監督アブデラディフ・ケシシュが本作以降、長編映画を発表していないのが気になる。

採点は80点です。

旧サイト:2014年04月7日(月)付Pick-upを再録、修正

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2020リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら😏  D=ヒマだ ったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

141『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン5』(2017年/米)B
140『ノースライト』(2020年/NHK)B
139『君の名は。』(2016年/東宝)A※
138『言の葉の庭』(2013年/コミックス・ウェーブ)B※
137『天気の子』(2019年/東宝)A
136『人間失格 太宰治と3人の女たち』(2019年/アスミック・エース)C
135『サニー/32』(2018年/日活)C
134『凶悪』(2013年/日活)B
133『ほえる犬は噛まない』(2000年/韓)C
132『暗黒の恐怖』(1950年/米)C※
131『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(2015年/米)A※
130『フューリー』(2014年/米)C※
129『ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の砲火』(2012年/露)B※
128『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』(2019年/露)C
127『ゾンビ・ガール』(2015年/米)B※
126『狼男アメリカン』(1981年/米)B※
125『ウルフ』(1994年/米)B
124『パルプ・フィクション』(1994年/米)A
123『トゥルー・クライム』(1999年/米)C
122『ブラッド・ワーク』(2002年/米)B
121『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン4』(2016年/米)B
120『ザ・コミー・ルール 元FBI長官の告白』(2020年/米)B
119『ジェミニマン』(2019年/米)B
118『ガール・イン・ザ・ミラー』(2019年/加)B
117『ドッペルゲンガー』(2003年/アミューズピクチャーズ)B
116『屍人荘の殺人』(2019年/東宝)B
115『ドクター・スリープ』(2019年/米)B
114『ランス・アームストロング ツール・ド・フランス7冠の真実』(2013年/米)A※
113『疑惑のチャンピオン』(2015年/英、仏)B※
112『陽だまりのグラウンド』(2001年/米)B
111『ホテル・ムンバイ』(2019年/豪、印、米)A
110『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(2018年/松竹)B
109『閉鎖病棟−それぞれの朝−』(2019年/東映)C
108『真実』(2019年/仏、日)A
107『氷の微笑』(1992年/米)B
106『チャーリーズ・エンジェル』(2019年/米)C
105『FBI:特別捜査班 シーズン1 #22対決の時』(2019年/米)C
104『FBI:特別捜査班 シーズン1 #21隠された顔』(2019年/米)B
103『FBI:特別捜査班 シーズン1 #20エジプトの要人』(2019年/米)B
102『轢き逃げ 最高の最悪な日々』(2019年/東宝)B
101『蜜蜂と遠雷』(2019年/東宝)B
100『ワン・カップ・オブ・コーヒー 栄光のマウンド』(1991年/米)A
99『ドリーム・ゲーム 夢を追う男』(1991年/米)B※
98『スラッガーズ・ワイフ』(1985年/米)B
97『死霊のはらわた』(2013年/米)C※
96『死霊のはらわた』(1981年/米)A※
95『脱出』(1972年/米)A※
94『ラスト・ムービースター』(2018年/米)B
93『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン3』(2015年/米)A
92『FBI:特別捜査官 シーズン1 #19白い悪魔』(2019年/米)B
91『FBI:特別捜査官 シーズン1 #18ラクロイ捜査官』(2019年/米)C
90『FBI:特別捜査班 シーズン1 #17秘密のデート』(2019年/米)C
89『世界の涯ての鼓動』(2017年/独、仏、西、米)C
88『殺人鬼を飼う女』(2019年/KADOKAWA)D
87『軍旗はためく下に』(1972年/東宝)A※
86『イングリッシュ・ペイシェント』(1996年/米)B
85『ラスト、コーション』(2007年/台、香、米)A
84『サンセット大通り』(1950年/米)A※
83『深夜の告白』(1944年/米)A
82『救命艇』(1944年/米)B※
81『第3逃亡者』(1937年/英)B※
80『サボタージュ』(1936年/英)B※
79『三十九夜』(1935年/英)A※
78『ファミリー・プロット』(1976年/米)A※
77『引き裂かれたカーテン』(1966年/米)C
76『大いなる勇者』(1972年/米)A※
75『さらば愛しきアウトロー』(2018年/米)A
74『インターステラー』(2014年/米)A
73『アド・アストラ』(2019年/米)B
72『FBI:特別捜査班 シーズン1 #16ラザロの誤算』(2019年/米)C
71『FBI:特別捜査班 シーズン1 #15ウォール街と爆弾』(2019年/米)C
70『FBI:特別捜査班 シーズン1 #14謎のランナー』(2019年/米)D
69『FBI:特別捜査班 シーズン1 #13失われた家族』(2019年/米)D
68『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン2』(2014年/米)A
67『記憶にございません!』(2019年/東宝)B
66『新聞記者』(2019年/スターサンズ、イオンエンターテイメント)B
65『復活の日』(1980年/東宝)B
64『100万ドルのホームランボール 捕った!盗られた!訴えた!』(2004年/米)B
63『ロケットマン』(2019年/米)B
62『ゴールデン・リバー』(2018年/米、仏、羅、西)B
61『FBI:特別捜査班 シーズン1 #12憎しみの炎』(2019年/米)B
60『FBI:特別捜査班 シーズン1 #11親愛なる友へ』(2019年/米)B
59『FBI:特別捜査班 シーズン1 #10武器商人の信条』(2018年/米)A
58『FBI:特別捜査班 シーズン1 #9死の極秘リスト』(2018年/米)B
57『病院坂の首縊りの家』(1979年/東宝)C
56『女王蜂』(1978年/東宝)C
55『メタモルフォーゼ 変身』(2019年/韓)C
54『シュラシック・ワールド 炎の王国』(2018年/米)C
53『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン1』(2013年/米)A
52『FBI:特別捜査班 シーズン1 #8主権を有する者』(2018年/米)C
51『FBI:特別捜査班 シーズン1 #7盗っ人の仁義』(2018年/米)B
50『FBI:特別捜査班 シーズン1 #6消えた子供』(2018年/米)B
49『FBI:特別捜査班 シーズン1 #5アローポイントの殺人』(2018年/米)A
48『アメリカン・プリズナー』(2017年/米)D
47『夜の訪問者』(1970年/伊、仏)D
46『運命は踊る』(2017年/以、独、仏、瑞)B
45『サスペクト−薄氷の狂気−』(2018年/加)C
44『ザ・ボート』(2018年/馬)B
43『アルキメデスの大戦』(2019年/東宝)B
42『Diner ダイナー』(2019年/ワーナー・ブラザース)C
41『ファントム・スレッド』(2017年/米)A
40『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年/米)B
39『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年/米)A
38『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年/米)A
37『ビリーブ 未来への大逆転』(2018年/米)B
36『ワンダー 君は太陽』(2017年/米)A
35『下妻物語』(2004年/東宝)A
34『コンフィデンスマンJP ロマンス編』(2019年/東宝)C
33『FBI:特別捜査班 シーズン1 #2緑の鳥』(2018年/米)A
32『FBI:特別捜査班 シーズン1 #1ブロンクス爆破事件』(2018年/米)B
31『THE GUILTY ギルティ』(2018年/丁)A
30『ザ・ラウデスト・ボイス−アメリカを分断した男−』(2019年/米)A
29『X-MEN:アポカリプス』(2016年/米)B※
28『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014年/米)C※
27『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011年/米)B※
26『X-MEN:ダーク・フェニックス』(2019年/米)D
25『ヴァンパイア 最期の聖戦』(1999年/米)B
24『クリスタル殺人事件』(1980年/英)B
23『帰ってきたヒトラー』(2015年/独)A※
22『ヒトラー〜最期の12日間〜』(2004年/独、伊、墺)A
21『ヒトラー暗殺、13分の誤算』(2015年/独)A
20『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』(1986年/米)B
19『大脱出2』(2018年/中、米)D
18『大脱出』(2013年/米)B
17『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(2018年/米)B
16『ハンターキラー 潜航せよ』(2018年/米)C
15『グリーンブック』(2018年/米)A
14『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017年/英、米)B
13『天才作家の妻 40年目の真実』(2018年/瑞、英、米)B
12『デッドラインU.S.A』(1954年/米)B
11『前科者』(1939年/米)C
10『化石の森』(1936年/米)B
9『白熱』(1949年/米)A
8『犯罪王リコ』(1930年/米)B
7『ユリシーズ 』(1954年/伊)C
6『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017年/泰)B
5『七つの会議』(2019年/東宝)A
4『キャプテン・マーベル』(2019年/米)B
3『奥さまは魔女』(2005年/米)C
2『フロントランナー』(2018年/米)B
1『運び屋』(2018年/米)A 

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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