『ガタカ』(WOWOW)

Gattaca
106分 1997年 アメリカ=コロンビア・ピクチャーズ 日本配給:1998年 ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメント(SPE)

そう遠くない未来、人類社会は遺伝子操作によって「適正者」と「不適正者」に厳格に区別されていた。
不適正者が落伍者としての烙印を押される一方、適正者は優良企業に属し、十分な収入を与えられ、裕福な生活を満喫している。

そんな適正者ばかりが集められ、地球的規模の宇宙旅行を運営しているのが宇宙局「ガタカ」。
ここからは週に一度、地球外で快適な暮らしをする権利を得た人間たちがロケットに乗って宇宙へ旅立っていた。

主人公ヴィンセント・アントン・フリーマン(イーサン・ホーク)は、そのガタカに勤務しながら、土星への宇宙旅行に選ばれる日を心待ちにしている。
しかし、実はヴィンセントは不適正者で、適正者ジェローム・ユージーン・モロー(ジュード・ロウ)と偽って勤務を続けていた。

ヴィンセントはもともと、父アントニオ(イライアス・コティーズ)と母マリー(ジェイン・ブルック)がまだ若かったころ、軽はずみなセックスで〝デキちゃった〟長男だった。
これを後悔した両親は遺伝子操作を受けて次男アントン(ローレン・ディーン)をつくり、ヴィンセントは勉強でも運動でもこの弟に勝てず、劣等感に苛まれながら成長する。

そんな兄弟が、いつもふたりだけでやっている〝チキンレース〟があった。
自宅近くの浜辺から沖に向かって泳ぎ、先に〝参った〟をしたほうが浜辺に引き返すことができるのだ。

子供のころからアントンに負けてばかりだったヴィンセントは、これが最後と決めた勝負でついに勝ち、溺れかけたアントンを救って浜辺に辿り着いた。
これで自信を持ち、ガタカに入りたいという野望を抱いたヴィンセントに、遺伝子ブローカーのジャーマン(トニー・シャルーブ)が、元水泳選手ジェローム・モローに成りすますことができますよ、と持ちかける。

ジェロームはかつてオリンピックで金メダルを狙えると言われたスイマーだったが、事故で脚を怪我してしまい、車椅子生活の身。
ガタカで稼ぐ給料の2割をもらえれば、自分のDNAが含まれた尿、血液、体毛など、すべてを提供するという。

ガタカでは〝偽適正者〟を摘発するため、出社時は指先から採血し、抜き打ちの尿検査も行なった上、フロアに落ちている髪の毛なども隈なく採取していた。
この厳重なチェックをかいくぐるため、ヴィンセントは毎日体毛を剃り、血液と尿のパックを持って出勤を続ける。

果たして、ヴィンセントは周囲の目を欺き通し、念願の土星旅行の切符を掴むことができるのか。
ガタカの同僚、アイリーン・カッシーニ(ユマ・サーマン)はヴィンセントと恋に落ち、彼の正体に気づく。

本作の製作から20年以上経っている今日では、近未来の管理社会のディテールがいかにも時代遅れに見えるのは如何ともしがたい。
しかし、本作から14年後に傑作『TIME タイム』(2011年)を作り上げたアンドリュー・ニコルのセンスと世界観はやはり秀逸で、ストーリー・テリングも非常に巧み。

若き日のホークとロウ、ヒロインのサーマン、弟役のディーンを加えた演技合戦も大変見応えがある。
ゴールデングローブ賞にノミネートされたマイケル・ナイマンの音楽、ロサンゼルス市庁舎、カリフォルニア州マリン郡のシビックセンター、屋内競技場ザ・フォーラムなで行われたロケ撮影も素晴らしい。

オススメ度A。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
A=ぜひ!(*^o^*)  B=よかったら( ´▽`) C=気になったら(・・?)  D=ヒマだ ったら(。-_-。)
※ビデオソフト無し

102『デューン 砂の惑星』(1984年/米)C
101『ファイヤーフォックス』(1982年/米)C
100『デス・ウィッシュ』(2018年/米)C
99『人魚の眠る家』(2018年/松竹)A
98『焼肉ドラゴン』(2018年/ファントム・フィルム)B
97『アニメ 大好きだったあなたへ ヒバクシャからの手紙』(2019年/NHK広島放送局)A※
96『ひろしま』(1953年/北星映画)B※
95『硫黄島からの手紙』(2006年/米)A
94『父親たちの星条旗』(2006年/米)A
93『さすらいの一匹狼』(1966年/伊、西)C
92『リンゴ・キッド』(1966年/伊)C
91『皆殺し無頼』(1966年/伊)C
90『バリー・シール アメリカをはめた男』(2017年/米)A
89『スマホを落としただけなのに』(2018年/東宝)C
88『アントマン&ワスプ』(2018年/米)A
87『アイアンマン』(2008年/米)A
86『ミクロの決死圏』(1966年/米)C
85『クレオパトラ』(1963年/米)C
84『瞳の中の訪問者』(1977年/東宝)D
83『HOUSE ハウス』(1977年/東宝)C
82『マザー!』(2017年/米)B
81『アリー・イン・ザ・ターミナル』(2018年/米、英、愛、洪、香)D
80『ヴェノム』(2018年/米)B
79『ミッション:インポッシブル フォールアウト』(2018年/米)B
78『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』(2015年/米)A
77『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』(2011年/米)C
76『M:i:Ⅲ』(2006年/米)B
75『M:i-2』(2000年/米)C
74『ミッション:インポッシブル』(1996年/米)C
73『ダンテズ・ピーク』(1996年/米)C
72『スーパーマン4 最強の敵』(1987年/米)D
71『スーパーマンⅢ 電子の要塞』(1983年/米)C
70『スーパーマンⅡ リチャード・ドナーCUT版』(2006年/米)B
69『スーパーマンⅡ 冒険篇』(1980年/米)A
68『スーパーマン ディレクターズ・カット版』(1978年/米)A
68『MEG ザ・モンスター』(2018年/米)C
67『search/サーチ』(2018年/米)A
66『検察側の罪人』(2017年/東宝)D
65『モリのいる場所』(2018年/日活)B
64『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(2017年/米)B
63『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年/韓)A
62『ゲティ家の身代金』(2017年/米)B
61『ブルーサンダー 』(1983年/米)A
60『大脱獄』(1970年/米)C
59『七人の特命隊』(1968年/伊)B
58『ポランスキーの欲望の館』(1972年/伊、仏、西独)B
57『ロマン・ポランスキー 初めての告白』(2012年/英、伊、独)B
56『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017年/米)A
55『ウインド・リバー』(2017年/米)A
54『アメリカの友人』(1977年/西独、仏)A
53『ナッシュビル』(1976年/米)A
52『ゴッホ 最後の手紙』(2017年/波、英、米)A
51『ボビー・フィッシャーを探して』(1993年/米)B
50『愛の嵐』(1975年/伊)B
49『テナント 恐怖を借りた男』(1976年/仏)B
48『友罪』(2018年/ギャガ)D
47『空飛ぶタイヤ』(2018年/松竹)B
46『十一人の侍』(1967年/東映)A
45『十七人の忍者 大血戦』(1966年/東映)C※
44『十七人の忍者』(1963年/東映)C
43『ラプラスの魔女』(2016年/東宝)C
42『真夏の方程式』(2013年/東宝)A
41『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018年/米)B
40『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年/米)B
39『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年/米)C
38『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』(2017年/米)D
37『デッドプール2』(2018年/米)C
36『スキャナーズ3』(1991年/加)C
35『スキャナーズ2』(1991年/米、加、日)C
34『スキャナーズ』(1981年/加)B
33『エマニエル夫人』(1974年/仏)C
32『死刑台のエレベーター』(1958年/仏)B
31『マッケンナの黄金』(1969年/米)C
30『勇気ある追跡』(1969年/米)C
29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2012年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B※

1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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