『スーパーマンⅡ リチャード・ドナーCUT版』(セルDVD)

Superman II: The Richard Donner Cut
116分 2006年 アメリカ=ワーナー・ブラザース

これはWOWOWの特集ではなく、セルDVDをヨドバシドットコムで購入した。
2006年の公開後、単品のビデオソフトは3000円台のブルーレイしか製作されていなかったのだが、14年から1000円台のDVDも販売されており、今回の『スーパーマンⅡ 冒険篇』(1980年)再見を機にじっくりと見比べてみたくなった。

前項でも書いた通り、『スーパーマン』(1978年)と『冒険篇』はもともと1本の作品の前編と後編という構成になっており、どちらもリチャード・ドナー監督の下で製作が進行していた。
だから、『冒険篇』で大暴れするゾッド将軍(テレンス・スタンプ)、アーサ(サラ・ダグラス)、ノン(ジャック・オハローラン)が『スーパーマン』の冒頭に登場していたのである。

ところが、ドナー監督がその後、プロデューサーのアレクサンダー&イリヤ・サルキンド親子、ピエール・スペングラーとの確執により降板。
契約上の問題により、スーパーマンの父ジョー・エル役、マーロン・ブランドの出演場面などが使えなくなったため、『冒険篇』はリチャード・レスターを新たに監督に起用し、独立した作品として撮影と編集をやり直さざるを得なくなった。

その『冒険篇』が公開されてから20年以上が経過し、スーパーマンを演じたクリストファー・リーヴが2004年に他界。
また新たに『X-MEN』(2000年)のようなアメコミ・ヒーローの実写映画化版がヒットするようなになった時代背景もあり、ドナー独自の映像だけによるスーパーマン第2作が製作されることになったのである。

オープニングは前作同様、ジョー・エルがゾッド将軍ら3人を裁判にかけ、ファントム・ゾーン(クリスタル・ガラス)に閉じ込める場面から始まる。
続いて、前作のクライマックス、スーパーマンがレックス・ルーサー(ジーン・ハックマン)の発射した核ミサイルを宇宙空間で爆発させるシーン。

この衝撃によってクリスタル・ガラスが破壊され、ゾッド将軍たちが脱出し、やがてスーパーマンと対決することになる。
なるほど、これが本来のシナリオだったのか、と納得はしたものの、『冒険篇』を先に観ていると、エッフェル塔のくだりがまるまるカットされているのははっきり言って物足りない。

また、ロイス・レイン(マーゴット・キダー)が最初からスーパーマンの正体はクラーク・ケントだと気づいている、という設定も『冒険篇』とは違う。
序盤、ケントの目の前でデイリー・プラネットのビルから飛び降り、スーパーマンに変身させようとするが、ケントが機転を利かせて簡単に救ってしまう場面がなかなか面白い。

ただし、ナイアガラのホテルでケントがロイスに正体を明かす肝心のシーンは、スクリーンテストのフィルムが流用されていて、前後の場面と比べるとトーンが異なり、画質も格段に落ちている。
また、契約上の問題が解消されて復刻されたブランドの登場場面も、合成に粗が目立ち、期待したほどには優れた場面になっていない。

エンディングではスーパーマンが地球の周囲を回って地球を逆回転させ、時間を遡ることにより、自分の正体を知ったロイスの記憶を消去する。
この逆回転はもともと、後編の幕切れに用意されていたアイデアで、前編はまた違った終わり方をするはずだったらしい。

ドナーの狙いはわかるし、シナリオとしても首尾結構が整ってはいるが、3分の1くらいは前作の焼き直しを見せられているような印象が先に立つ。
26年後の再編集版だけに、『冒険篇』より出来栄えが劣っているのも仕方のないところか。

DVDのコメンタリーによれば、ドナーは当初、シリーズ第7作までスーパーマンの構想を練っていたという。
ただし、それが実現していたら、のちの『リーサル・ウェポン』(1987年)シリーズはなかったわけだから、やっぱりこれでよかったのかもしれない。

オススメ度B。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)
※ビデオソフト無し

69『スーパーマンⅡ 冒険篇』(1980年/米)A
68『スーパーマン ディレクターズ・カット版』(1978年/米)A
68『MEG ザ・モンスター』(2018年/米)C
67『search/サーチ』(2018年/米)A
66『検察側の罪人』(2017年/東宝)D
65『モリのいる場所』(2018年/日活)B
64『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(2017年/米)B
63『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年/韓)A
62『ゲティ家の身代金』(2017年/米)B
61『ブルーサンダー 』(1983年/米)A
60『大脱獄』(1970年/米)C
59『七人の特命隊』(1968年/伊)B
58『ポランスキーの欲望の館』(1972年/伊、仏、西独)B
57『ロマン・ポランスキー 初めての告白』(2012年/英、伊、独)B
56『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017年/米)A
55『ウインド・リバー』(2017年/米)A
54『アメリカの友人』(1977年/西独、仏)A
53『ナッシュビル』(1976年/米)A
52『ゴッホ 最後の手紙』(2017年/波、英、米)A
51『ボビー・フィッシャーを探して』(1993年/米)B
50『愛の嵐』(1975年/伊)B
49『テナント 恐怖を借りた男』(1976年/仏)B
48『友罪』(2018年/ギャガ)D
47『空飛ぶタイヤ』(2018年/松竹)B
46『十一人の侍』(1967年/東映)A
45『十七人の忍者 大血戦』(1966年/東映)C※
44『十七人の忍者』(1963年/東映)C
43『ラプラスの魔女』(2016年/東宝)C
42『真夏の方程式』(2013年/東宝)A
41『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018年/米)B
40『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年/米)B
39『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年/米)C
38『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』(2017年/米)D
37『デッドプール2』(2018年/米)C
36『スキャナーズ3』(1991年/加)C
35『スキャナーズ2』(1991年/米、加、日)C
34『スキャナーズ』(1981年/加)B
33『エマニエル夫人』(1974年/仏)C
32『死刑台のエレベーター』(1958年/仏)B
31『マッケンナの黄金』(1969年/米)C
30『勇気ある追跡』(1969年/米)C
29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2012年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B※

1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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