『アベンジャーズ エンドゲーム』(IMAX-3D)

(Avengers: Endgame/181分 2019年 アメリカ=ウォルト・ディズニー・モーション・ピクチャーズ)

WOWOWで観た前項『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018年)がそこそこ面白く、いやに気を持たせた終わり方をしているものだから、続きの本作にもムラムラと興味が湧いた。
新宿、六本木のIMAXで観ようとネットで席を探したらどこもかしこも満席と、大ヒットしていることも気になり、きのうの12時45分、割と空いていた109シネマズ木場で鑑賞。

ちなみに、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)シリーズを劇場で観るのも、木場の映画館まで足を運んだのも今回が初めて。
第1作『アイアンマン』(2008年)から11年目と22作目を迎えたこのシリーズも、本作でいったん大団円となるという。

本作はもともと前作のパート2として製作される予定だったところ、シリーズ最終作に相応しい独立した映画として企画が練り直されたという経緯があると聞く。
そのせいか、アベンジャーズのメンバーがサノス(ジョシュ・ブローリン)に次々に殺されてしまう(というより消失させられる)前作の幕切れ直後ではなく、残されたメンバーの5年後からストーリーが始まる。

アイアンマン/トニー・スターク(ロバート・ダウニー・jr.)は妻ペッパー・ポッツ(グウィネス・パルトロー)、一人娘とリタイヤ同然の生活を送っている。
マイティ・ソー(クリス・ヘムズワース)は故郷の避難民と小さな村落〝ニュー・アスガルド〟で隠遁、一日中ビールを飲みながらケーブルテレビで映画を観ているアル中のニートとなり、腹の出ただらしない体型に変貌していた。

すっかり落ちぶれ、反撃の手立てがない彼らが、どのようにしてサノスにリベンジし、失われた仲間たちを復活させるのか。
やけにまったりした出だしだなあ、と思いながら観ていると、『アントマン&ワスプ』(2018年)で量子の世界に閉じ込められていたアントマン/スコット・ラング(ポール・ラッド)が復活。

サノスは前作で6個のインフィニティ・ストーンのパワーを強奪し、ストーンのパワーを使って全人類の半分を虐殺、アベンジャーズのメンバーも殺している。
それなら、サノスがストーンを手に入れる前まで時間を遡り、ストーンを然るべき場所へ隠してしまえばいい、とスコットが言い出す。

現在公開中の映画なので、これ以上のネタバレは控えますが、正直なところ、私はこれ、一種の〝反則〟だと思うんですよ。
『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014年)もそうだったけれど、ただでさえ超人的な能力を持つキャラクターたちが、(多少の制約があるとはいえ)タイムトラベルまで可能になったら、〝万能の神〟に近い存在になってしまう。

製作者側も恐らく、映画ファンに古臭いアイデアだ、昔から何度も繰り返されている手口じゃないか、と批判されるのを予期していたのだろう。
トニーが「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を地でいくのか」と言い募るのをはじめ、ほかのメンバーも『ターミネーター』、『スター・トレック』、『ある日どこかで』、『タイム・アフター・タイム』と同工異曲の傑作を並べ上げ、「タイムトラベルSFの名作を否定するのか」などとツッコミを入れている。

ここで引き合いに出されているのは『スター・トレック4 故郷への長い道』(1986年)で、この映画の脚本を書いたニコラス・メイヤーが監督したのが『タイム・アフター・タイム』(1979年)。
また、SF作家ハーラン・エリスンによるタイムトラベルのアイデアをうまくいただいた(パクった?)『ターミネーター』(1984年)、『ターミネーター2』(1991年)は、新シリーズ第1作『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(2015年)で強引に同じ手口を使い、「単なるファンタジーになってしまった」と酷評された。

(※なお、この過去作品との対比に関しては、このレビューを読んだ知人から「『ある日どこかで』(1981年)へのオマージュも含まれているのではないか」というコメントがFacebookに寄せられました。
なるほど、と思わせる指摘だったが、ネタバレになるので詳述は避けます。)

そうした映画をほとんどオンタイムで観ている私としては、タイムトラベルのアイデアが出てきたところで妙に冷静になってしまい、ワクワク、ドキドキして手に汗握るところまでいかなかった。
それでも、3時間1分(20分近くはエンドクレジットだけど)もの長尺を、とにもかくにも退屈させずに見せてしまうのは、さすが安心と伝統のマーベル印か。

キャロル・ダンヴァース/キャプテン・マーベル(ブリー・ラーソン)をはじめ、強い女子キャラも魅力たっぷりで、入場料分はしっかり楽しませてくれる。
キャプテン・マーベルはそんなに強いんならもっと早く出てこい、アントマンも最初からジャイアントマンになればいいだろと言いたくなったのも確かだけど…いや、もうよそう。

採点は75点です。

TOHOシネマズ新宿・六本木・上野、新宿ピカデリー、109シネマズ木場などで公開中

※50点=落胆 60点=退屈 70点=納得 80点=満足 90点=興奮(お勧めポイント+5点)

2019劇場公開映画鑑賞リスト
3『ファースト・マン』(2018年/米)85点

2『翔んで埼玉』(2019年/東映)80点
1『クリード 炎の宿敵』(2018年/米)85点

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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