『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』(WOWOW)

(The Mummy/111分 2017年 アメリカ=ユニバーサル・ピクチャーズ 日本配給=東宝東和)

劇場公開された2年前、なぜいまごろ戦前の怪奇映画(戦前はホラー映画やオカルト映画ではなくこう呼ばれていた)〝ミイラ男〟をリメイクしたのかと思っていたら、タイトルバックにデカデカと〈ダーク・ユニバース〉というクレジットが出てくる。
本作を第1弾として、ドラキュラ、フランケンシュタイン、半魚人、透明人間などなど、かつてユニバーサル映画が生み出した怪物たちのリブート版をシリーズ化する計画なのだそうだ。

マーベル(配給ディズニー)やDC(同ワーナー・ブラザース)がコミックスの実写映画版、ヒーロー&モンスターのリブート版シリーズをヒットをさせていることから、ユニバーサルも「焼き直しのネタならこっちにもゴマンとあるぞ」と〝便乗企画〟に乗り出した、ということか。
しかし、その記念すべき第1弾となる本作は、完全な失敗作に終わっている。

ミイラ男を女性(古代エジプトのアマネット王女=ソフィア・ブテラ)に変更したアイデアはなかなかよく、彼女が大昔生き埋めにされる場面、彼女が現代に化け物となって蘇るくだりはよくできている。
しかし、このアマネットを取り巻く現代人のキャラクターが何を考えているのかさっぱりわからないのが致命的。

主人公の米軍軍曹ニック・モートン(トム・クルーズ)は考古学者のジェニー・ハルジー(アナベル・モーリス)と一夜をともにしながら、彼女が持っていた財宝の在り処を示す地図を盗んでドロン。
そうかと思うと、一緒に乗っていた輸送機が墜落しかけるや、ニックが今度は一つしかないパラシュートをジェニーに装着してやり、自分はいったん〝墜落死〟してしまう。

ところが、ニックがかすり傷ひとつ負わずに蘇生し、ジェニーと探索に出かけた墓所でゾンビに襲われると、今度はジェニーを置き去りにしてトラックで逃げようとするのだ。
そうかと思うと、終盤にはいったん〝溺死〟したジェニーを救うためにアマネットとの真っ向対決に臨むのだから、行き当たりばったりにもほどがある。

また、ジェニーの上司の二重人格者、ジキル博士(ラッセル・クロウ)のキャラクターの性格と行動もデタラメで破綻だらけ。
ニックにミイラ王女についてあれこれ講釈している最中、ハイド氏に変身しようとする発作が起こり、そのたびに自ら注射を打って冷や汗を流しているのだが、最初から注射を打ってニックと話せばいいだろう、とツッコミを入れないではいられない。

というわけで、映画全体も怖がらせたいのか笑わせたいのか、ふざけているのか真面目にやっているのか、まったくもって理解不能。
時間潰し用のホラー・アドベンチャーとして観ても、これほどつまらない作品は久しぶりだった。

オススメ度D。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

37『デッドプール2』(2018年/米)C
36『スキャナーズ3』(1991年/加)C
35『スキャナーズ2』(1991年/米、加、日)C
34『スキャナーズ』(1981年/加)B
33『エマニエル夫人』(1974年/仏)C
32『死刑台のエレベーター』(1958年/仏)B
31『マッケンナの黄金』(1969年/米)C
30『勇気ある追跡』(1969年/米)C
29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2912年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12 『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B
1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
先頭に戻る