『勇気ある追跡』(NHK-BS)

(True Grit/128分 1969年 アメリカ=パラマウント・ピクチャーズ)

前項『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年)と同様、ハリウッド映画の古典的名作だが、ノーカット字幕版を観たのは今回が初めて。
主役の独眼シェリフ、ルースター・コグバーンを演じた〝ミスター西部劇〟ジョン・ウェインが生涯で唯一アカデミー主演男優賞を獲得した作品でもある。

父親(ジョン・ピカード)を殺された少女マティ・ロス(キム・ダービー)が、犯人の無法者トム・チェイニー(ジェフ・コーリー)を逮捕してもらおうと、大酒飲みの保安官コグバーンを雇う。
チェイニーは先住民族の居留地に逃げ込んでいるため、州境をまたがる逮捕権を持ったシェリフでなければ捕まえることができないからだ。

この親子のようなふたりにテキサス・レンジャーのラビーフ(グレン・キャンベル)が加わり、ロードムービー的珍道中を繰り広げながら仇のチェイニーを追い詰めてゆく。
あれ、こんなところに、と思ったのは、チェイニーの兄貴分ネッド・ペッパーを演じているロバート・デュヴァルで、コグバーン=ウェインの向こうを張る悪役の大物として描かれている。

ウェインは撮影当時62歳と、まだかろうじて貫録を残していた晩年のころ。
クライマックスでは1対4で馬上の決闘を演じ、「まだまだ若いモンには負けん!」と言わんばかりのハッスルぶりを見せている。

ウェインがお転婆娘のダービーに昔の武勇伝を得意げに語り、心を通わせ合うようになるくだりもシンミリとさせる見せどころ。
そこはかとなく、老境に入ったガンマンの物悲しさを漂わせているところがいい。

ただし、正直なところ、ぼく個人としては、スピルバーグ製作総指揮、コーエン兄弟の監督・脚本でリメイクされた『トゥルー・グリット』(2010年)のほうが出来栄えははるかに上だと思う。
リメイク版でジェフ・ブリッジスが演じたコグバーンは、時代に取り残された酔っ払いの西武男として描かれており、無法者を殺すために後ろから狙撃するなど、卑怯な手を使うことも厭わない。

そのコグバーンを雇う少女マティ(ヘイリー・スタインフェルド)にも、思わぬ重傷を負う過酷な運命が待ち構えている。
彼女は仇討ちを果たしたあと、生涯独身を貫いて父の事業を発展させることに成功し、もう一度コグバーンやラビーフと再会したいと願うのだが、ほろ苦くも胸に沁みるエンディングを迎える。

人にどちらを勧めるかと言われたら、ぼくは断然『トゥルー・グリット』なのです。
本作のオススメ度はC。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米、伊)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2912年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12 『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B
1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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