『フレンチ・コネクション』(WOWOW)😉

フレンチ・コネクション』(WOWOW)
The French Connection
104分 1971年 アメリカ=20世紀FOX 日本公開:1972年

先月、日本でもようやく公開された『恐怖の報酬 オリジナル完全版』(1977/2013年)が予想以上のスマッシュヒットとなったため、ウィリアム・フリードキン監督が初のオスカーを獲得した本作も一部映画館でカップリング上映された。
第44回アカデミー賞では、作品賞、フリードキンの監督賞のほか、ジーン・ハックマンの主演男優賞など、脚色賞、編集賞など主要5部門を受賞している。

私が初めて本作を見たのは例によって中学か高校のころ、地上波テレビの洋画劇場だった。
このときは、評判になった高架線を走る電車とドイルの運転する車のチェイスシーンより、シャルニエ(フェルナンド・レイ)が逃げおおせた直後、唐突に終わるエンディングのほうが印象に残っている。

これはノーカット字幕版を見た今回も同様。
麻薬取引の現場を押さえ、シャルニエをあと一歩のところまで追い詰めていた最中、ポパイ・ドイル(ハックマン)は自分と確執のあった財務省麻薬取締官マルデリック(ビル・ヒックマン)を誤射して殺してしまう。

そのことを同僚の刑事バディ・ルッソ(ロイ・シャイダー)に非難されながら、ドイルはショックも受けず、動揺する様子も見せず、なおシャルニエを追いかけてゆく。
事ほど左様にドイルは非常に偏執的、かつ職務のためには倫理や道義、さらには社会常識すら二の次という人物で、それがクライマックスのカーチェイスの描写にもよく現れている。

しかも、カーチェイスの直後には、丸腰で逃げ続ける殺し屋ニコリ(マルセル・ボズフィ)を背後から射殺。
これほど冷酷では、クリント・イーストウッドの『ダーティハリー』みたいに大衆受けしてシリーズ化されるようなデカキャラにはなれない(続編だけは作られたが)。

もっとも、劇場公開当時のポスター(画像)に使われたこのシーンは、映画としてはなかなかの名場面。
『ブレードランナー』(1982年)でリック・デッカード(ハリソン・フォード)がゾーラ・サロメ(ジョアンナ・キャシディ)を殺した場面を彷彿とさせ、後進の映画人にも少なからぬ影響を与えているのかな、という推測もできる。

ただし、本作は1961年に起こった実際の事件を基にしている(原作はロビン・ムーアによる同名ノンフィクション小説)ため、モデルとなったニューヨーク市警察本部薬物対策課刑事エドワード・イーガンとサルヴァトーレ・グロッソはこの射殺シーンに強く抗議したという。
一方で、実録ならではの強みもあり、シャルニエがテレビタレントのアンリ(フレデリック・ド・パスカル)のリンカーンにヘロインを隠してマルセイユからニューヨークへ運び込む巧妙な手口、これをポパイとルッソが暴く過程は大きな見どころのひとつ。

音楽はジャズ・ミュージシャンのドン・エリスが担当しており、このテーマ曲がまたまことに強烈。
彼の起用を決めたのもフリードキンだったそうで、もっと再評価されてもいい監督だと、改めて思った。

オススメ度B。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2018リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

149『宇宙からのメッセージ』(1978年/東映)C
148『惑星大戦争』(1977年/東映)C
147『クリスティーン』(1983年/米)B
146『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017年/米)B
145『スリー・ビルボード』(2017年/米)A
144『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017年/クロックワークス)A
143『牝』(1964年/東映)C
142『あばずれ』(1966年/東映)A
141『審判』(1962年/仏、伊、西独)C
140『残像』(2016年/波)A
139『ある過去の行方』(2013年/伊朗)A
138『別離』(2011年/伊朗)A
137『クリード チャンプを継ぐ男』(2015年/米)A
136『キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017年/英、米)C
135『007 ダイ・アナザー・デイ』(2002年/英、米)B
134『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997年/英、米)B
133『007 ゴールデンアイ』(1995年/英、米)A
132『ジオストーム』(2017年/米)C
131『ザ・サークル』(2017年/米)C
130『殺人の告白』(2012年/韓)A
129『日本暗黒街』(1966年/東映)C
128『博徒仁義 盃』(1970年/東映)C
127『ビジランテ』(2017年/東京テアトル)A
126『ジョーカー・ゲーム』(2015年/東宝)C
125『007 消されたライセンス』(1989年/英、米)A
124『007 リビング・デイライツ』(1987年/英、米)B
123『007 オクトパシー』(1983年/英、米)C
122『007 黄金銃を持つ男』(1974年/英、米)C
121『チェンジリング』(2008年/米)A
120『エル ELLE』(2016年/仏、白、独)A
119『女王陛下の007』(1969年/英、米)C
118『007 スペクター』(2015年/英、米)B
117『007 慰めの報酬』(2008年/英、米)C
116『007 カジノ・ロワイヤル』(2006年/英、米)C
115『暴走パニック 大激突』(1976年/東映)C
114『お尋ね者七人』(1966年/東映)B
113『忍者狩り』(1964年/東映)C
112『十兵衛暗殺剣』(1964年/東映)B
111『十三人の刺客』(1963年/東映)B
110『地上最大のショウ』(1952年/米)A
109『スリーピー・ホロウ』(1999年/米)A
108『モネ・ゲーム』(2012年/米)C
107『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』(2017年/米)A
106『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』(2016年/米)C
105『ジェイソン・ボーン』(2016年/米)A
104『ボーン・レガシー』(2012年/米)C
103『ハンス・ジマー ライブ・イン・プラハ』(2017年/米)B
102『夕陽の群盗』(1972年/米)B
101『アウトロー』(1976年/米)A
100『スラップ・ショット』(1977年/米)B
99『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』(2017年/東宝)C
98『女囚さそり 701号怨み節』(1973年/東映)B
97『女囚さそり けもの部屋』(1973年/東映)B
96『女囚さそり 第41雑居房』(1972年/東映)B
95『女囚701号 さそり』(1972年/東映)A
94『風来坊探偵 赤い谷の惨劇』(1961年/東映)C
93『三度目の殺人』(2017年/東宝)C
92『スーパー・チューズデー ~正義を売った日~』(2011年/米)B
91『エイリアン:コヴェナント』(2017年/米)B
90『プロメテウス』(2012年/米)B
89『アンドロメダ… 』(1971年/米)A
88『亡霊怪猫屋敷』(1958年/新東宝)B
87『怪談かさねが渕 』(1957年/新東宝)B
86『一寸法師』(1955年/新東宝)C
85『黒蜥蜴』(1962年/大映)B
84『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』(1976年/日活)D
83『狼やくざ 葬いは俺が出す』(1972年/東映)B
82『博徒七人』(1966年/東映)A
81『泥棒成金』(1955年/米)A
80『スペース カウボーイ』(2000年/米)C
79『ソイレント・グリーン』(1973年/米)B
78『狼は天使の匂い』(1972年/仏)B
77『さらば友よ』(1968年/仏、伊)B
76『傷だらけの栄光』(1956年/米)A
75『ハンズ・オブ・ストーン』(2016年/米、巴)B
74『ダンケルク』(2017年/英、米、仏、蘭)B
73『墨攻』(2006年/中、日、香、韓) A
72『関ヶ原』(2017年/東宝)
71『後妻業の女』(2016年/東宝)B
70『ショートウェーブ』(2016年/米)D
69『Uターン』(1997年/米)B
68『ミラーズ・クロッシング』(1990年/米)C
67『シザーハンズ』(1990年/米)A
66『グーニーズ』(1985年/米)B
65『ワンダーウーマン』(2017年/米)B
64『ハクソー・リッジ』(2016年/米)A
63『リリーのすべて』(2016年/米)A
62『永い言い訳』(2016年/アスミック・エース)A
61『強盗放火殺人囚』(1975年/東映)C
60『暴動島根刑務所』(1975年/東映)B
59『脱獄広島殺人囚』(1974年/東映)A
58『893愚連隊』(1966年/東映)B
57『妖術武芸帳』(1969年/TBS、東映)B
56『猿の惑星』(1968年/米)A
55『アンドロメダ・ストレイン』(2008年/米)C
54『ヘイル、シーザー!』(2016年/米)B
53『パトリオット・デイ』(2016年/米)A
52『北陸代理戦争』(1977年/東映)A
51『博奕打ち外伝』(1972年/東映)B
50『玄海遊侠伝 破れかぶれ』(1970年/大映)B
49『暴力金脈』(1975年/東映)B
48『資金源強奪』(1975年/東映)B
47『ドライヴ』(2011年/米)C
46『バーニング・オーシャン』(2016年/米)A
45『追憶の森』(2015年/米)B
44『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年/ワーナー・ブラザース)B
43『パットン大戦車軍団』(1970年/米)B
42『レッズ』(1981年/米)B
41『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』(2016年/米)B
40『エクス・マキナ』(2015年/米)B
39『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999年/西)B
38『ムーンライト』(2016年/米)B
37『アメリカン・バーニング』(2017年/米)B
36『セル』(2017年/米)C
35『トンネル 闇に鎖された男』(2017年/韓)B
34『弁護人』(2013年/韓国)A
33『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年/クロックワークス)A
32『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017年/東宝)B
31『南極料理人』(2009年/東京テアトル)B
30『沈黙 -サイレンス-』(2016年/米)B
29『メッセージ』(2016年/米)B
28『LOGAN/ローガン』(2017年/米)C
27『チャック~“ロッキー”になった男~』(2017年/アメリカ)B
26『ヒッチコック/トリュフォー』(2015年/米、仏)B
25『沖縄やくざ戦争』(1976年/東映)B
24『恐喝こそわが人生』(1968年/松竹)B
23『われに撃つ用意あり』(1990年/松竹)C
22『T2 トレインスポッティング』(2017年/英)A
21『ロスト・エモーション』(2016年/米)C
20『激流』(1994年/米)C
19『チザム』(1970年/米)B
18『駅馬車』(1939年/米)A
17『明日に処刑を…』(1972年/米)A
16『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(1988年/仏、伊)B
15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
13『サム・ペキンパー 情熱と美学』(2005年/独)B
12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
9『ネオン・デーモン』(2016年/仏、丁、米)D
8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
7『スティーブ・ジョブズ』(2015年/米)B
6『スノーデン』(2016年/米)A
5『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B
4『ドクター・ストレンジ』(2016年/米)B
3『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年/台、香)B
2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
1『日の名残り』(1993年/英、米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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