『プロメテウス』(WOWOW)

『エイリアン』第1作(1982年)を監督したリドリー・スコットが30年後に作り上げた前日譚。
 というより、スコット自身による『エイリアン』のセルフ・オマージュみたいな作品である。

 『エイリアン』ではウェイランド社の宇宙船ノストロモ号が探索に立ち寄った小惑星で、謎の生物(エイリアン)が乗組員のひとりジョン・ハートに寄生。
 これが体内で成長してハートの胸を食い破り、急速に一種の怪獣へと巨大化すると、次々に乗組員たちを殺してゆく。

 その最中、科学主任のイアン・ホルムがウェイランド社が差し向けたアンドロイドであることが発覚。
 ノストロモ号に侵入したエイリアンは「究極の兵器」になり得る存在で、ウェイランド社も最初からそれを捕獲する目的でアンドロイドを乗船させていたことが明らかになる。

 あげく、乗組員はヒロインのシガーニイ・ウィーバーを除いて全員死亡。
 脱出用ポッドにまで潜り込んできたエイリアンをかろうじて始末したウィーバーは、最後の通信を終えたのち、地球への帰路に着いて冬眠カプセルに入る。

 本作はそうした第1作のポイントを踏まえたディテールが最大の見どころであり、タイトルクレジットから第1作の見せ方を踏襲している。
 タイトルのプロメテウスは第1作のノストロモ号と同じウェイランド社の宇宙船の名前で、目的の惑星に向けて航行中に別の小惑星が見つかり、こちらに途中下車するという展開もそっくりそのまま。

 主人公のヒロインはノオミ・ラパスで、ウェイランド社に差し向けられたアンドロイドはマイケル・ファスベンダー。
 第1作の序盤に現れた巨大な宇宙人の死骸、難破したブレスレット状の宇宙船に何があったのか、なかなかよく考えられた説明は腑に落ちるところが多く、納得しながら見ていられる。

 エイリアンが微生物として乗組員の体内に入り込むところは、さすがに第1作から30年もたっているぶん、現代のCG技術によって非常に精巧につくられている。
 エイリアンに寄生されたラパスが手術用カプセルに入り、腹の中で成長していた幼虫を取り出してぶっ殺そうとする場面も凄まじい(そのためか、日本ではPG12指定を受けた)。

 A先生(55歳)と同世代で、第1作をオンタイムで見ている人には結構楽しめるでしょうね。
 ただ、リドリー・スコット作品としてはパンチが弱く、オールドファンの勘所は押さえているものの、この時代に新作が公開されたという感動とサプライズには乏しかった。

 オススメ度B。

(2012年 アメリカ=20世紀FOX 124分)

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2018リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

89『アンドロメダ… 』(1971年/米)A
88『亡霊怪猫屋敷』(1958年/新東宝)B
87『怪談かさねが渕 』(1957年/新東宝)B
86『一寸法師』(1955年/新東宝)C
85『黒蜥蜴』(1962年/大映)B
84『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』(1976年/日活)D
83『狼やくざ 葬いは俺が出す』(1972年/東映)B
82『博徒七人』(1966年/東映)A
81『泥棒成金』(1955年/米)A
80『スペース カウボーイ』(2000年/米)C
79『ソイレント・グリーン』(1973年/米)B
78『狼は天使の匂い』(1972年/仏)B
77『さらば友よ』(1968年/仏、伊)B
76『傷だらけの栄光』(1956年/米)A
75『ハンズ・オブ・ストーン』(2016年/米、巴)B
74『ダンケルク』(2017年/英、米、仏、蘭)B
73『墨攻』(2006年/中、日、香、韓) A
72『関ヶ原』(2017年/東宝)
71『後妻業の女』(2016年/東宝)B
70『ショートウェーブ』(2016年/米)D
69『Uターン』(1997年/米)B
68『ミラーズ・クロッシング』(1990年/米)C
67『シザーハンズ』(1990年/米)A
66『グーニーズ』(1985年/米)B
65『ワンダーウーマン』(2017年/米)B
64『ハクソー・リッジ』(2016年/米)A
63『リリーのすべて』(2016年/米)A
62『永い言い訳』(2016年/アスミック・エース)A
61『強盗放火殺人囚』(1975年/東映)C
60『暴動島根刑務所』(1975年/東映)B
59『脱獄広島殺人囚』(1974年/東映)A
58『893愚連隊』(1966年/東映)B
57『妖術武芸帳』(1969年/TBS、東映)B
56『猿の惑星』(1968年/米)A
55『アンドロメダ・ストレイン』(2008年/米)C
54『ヘイル、シーザー!』(2016年/米)B
53『パトリオット・デイ』(2016年/米)A
52『北陸代理戦争』(1977年/東映)A
51『博奕打ち外伝』(1972年/東映)B
50『玄海遊侠伝 破れかぶれ』(1970年/大映)B
49『暴力金脈』(1975年/東映)B
48『資金源強奪』(1975年/東映)B
47『ドライヴ』(2011年/米)C
46『バーニング・オーシャン』(2016年/米)A
45『追憶の森』(2015年/米)B
44『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年/ワーナー・ブラザース)B
43『パットン大戦車軍団』(1970年/米)B
42『レッズ』(1981年/米)B
41『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』(2016年/米)B
40『エクス・マキナ』(2015年/米)B
39『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999年/西)B
38『ムーンライト』(2016年/米)B
37『アメリカン・バーニング』(2017年/米)B
36『セル』(2017年/米)C
35『トンネル 闇に鎖された男』(2017年/韓)B
34『弁護人』(2013年/韓国)A
33『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年/クロックワークス)A
32『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017年/東宝)B
31『南極料理人』(2009年/東京テアトル)B
30『沈黙 -サイレンス-』(2016年/米)B
29『メッセージ』(2016年/米)B
28『LOGAN/ローガン』(2017年/米)C
27『チャック~“ロッキー”になった男~』(2017年/アメリカ)B
26『ヒッチコック/トリュフォー』(2015年/米、仏)B
25『沖縄やくざ戦争』(1976年/東映)B
24『恐喝こそわが人生』(1968年/松竹)B
23『われに撃つ用意あり』(1990年/松竹)C
22『T2 トレインスポッティング』(2017年/英)A
21『ロスト・エモーション』(2016年/米)C
20『激流』(1994年/米)C
19『チザム』(1970年/米)B
18『駅馬車』(1939年/米)A
17『明日に処刑を…』(1972年/米)A
16『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(1988年/仏、伊)B
15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
13『サム・ペキンパー 情熱と美学』(2005年/独)B
12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
9『ネオン・デーモン』(2016年/仏、丁、米)D
8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
7『スティーブ・ジョブズ』(2015年/米)B
6『スノーデン』(2016年/米)A
5『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B
4『ドクター・ストレンジ』(2016年/米)B
3『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年/台、香)B
2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
1『日の名残り』(1993年/英、米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
先頭に戻る