『日の名残り』(WOWOW)🤗

The Remains of the Day
134分 1993年 イギリス、アメリカ=コロンビア映画 日本公開:1994年

2017年にノーベル文学賞を受賞した日系イギリス人作家カズオ・イシグロの同名小説を、やはりイギリスの名匠ジェームズ・アイヴォリー監督が映画化した作品。
劇場公開当時、アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞、主演女優賞など主要8部門にノミネートされた。

物語は第二次世界大戦が終わってから11年後の1956年、アンソニー・ホプキンス演じる執事ジェームズ・スティーヴンスが、長年仕えたイギリスの邸宅ダーリントン・ホールに新たな主人を迎えるところから始まる。
この屋敷はかつて由緒ある名家の英国紳士ダーリントン卿(ジェームズ・フォックス)が所有していたが、この日からアメリカで成り上がった政治家ルイス・ファラディ(クリストファー・リーヴ)のものになったのだ。

開巻、ホールの中でかつてはダーリントン卿の財産だった名画の数々がオークションにかけられ、ファラディが次々に競り落としていくくだりが、主の交代と時代の変遷を印象づける。
そのファラディは、スティーヴンスを労う意味で、しばらく仕事はしなくてもいいから休暇を取って旅行にでも行くようにと勧める。

しかし、執事としての仕事や習慣が身に染みついているスティーヴンスには、使用人が人手不足になっていることが心配でならず、とてものんびりとしていられない。
ちょうどかつて屋敷で働いていたメイド、ミス・ケントン(エマ・トンプソン)から手紙が届いており、彼女にもう一度職場に復帰してもらえないかと考えたスティーヴンスは、彼女の元へと車を走らせる。

ここから物語はスティーヴンスの回想になり、1920~30年代、かつての主人だったダーリントン卿をめぐる人間模様が繰り広げられる。
そのころのミス・ケントンは使用人として非常に有能だったのみならず、歯に衣着せぬ性格で、スティーヴンスが愛してやまない父親ウィリアム(ピーター・ヴォーン)について、給仕をするには年を取り過ぎているとスティーヴンスに直接進言するほどだった。

スティーヴンスは当初、そんなミス・ケントンを疎ましく思いながら、次第に好意を抱くようになってゆく。
このスティーヴンスを中心とした父親、ミス・ケントン、さらにダーリントン卿との関係が大変きめこまかく描写され、優しさと緊張感がない交ぜになった独特の雰囲気が素晴らしい。

やがて、ダーリントン・ホールで秘密裏に国際会議が開かれ、ダーリントン卿がナチスの台頭著しいドイツに肩入れしていることがわかってくる。
ナチスの思想に感化されたダーリントン卿は、身寄りのないユダヤ人の娘2人を解雇するようスティーヴンスに通告。

この決断を本人たちに伝えるよう、スティーヴンスに指示されたミス・ケントンは激しく反発する。
そして、スティーヴンスに惹かれていたにもかかわらず、別の男性の求婚を受け入れ、屋敷を去る決心をしたのだった。

スティーヴンスをはじめ、誰もが自分の仕事と信条に忠実に生きているがゆえに離ればなれになってゆく顛末を、監督のアイヴォリーは淡々と、しかしこちらの心にしっかりと引っかかりを残すように語ってゆく。
役者も全員好演で、とりわけホプキンスの抑制の効いた執事ぶりはオスカーを受賞できなかったのが不思議なくらい。

オススメ度A。

旧サイト:2018年01月5日(金)Pick-up記事を再録、修正

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだ ったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

66『メメント』(2000年/米)B
65『プレステージ』(2006年/米)B
64『シン・ゴジラ』(2016年/米)A※
63『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B※
62『GODZILLA ゴジラ』(2014年/米)B※

61『見知らぬ乗客』(1951年/米)B
60『断崖』(1941年/米)B
59『間違えられた男』(1956年/米)B
58『下女』(1960年/韓)C
57『事故物件 恐い間取り』(2020年/松竹)C
56『マーウェン』(2019年/米)C
55『かもめ』(2018年/米)B
54『トッツィー』(1982年/米)A※
53『ジュディ 虹の彼方に』(2019年/米)B
52『ザ・ウォーク』(2015年/米)A※
51『マン・オン・ワイヤー』(2008年/米)B※
50『フリーソロ』(2018年/米)A
49『名も無き世界のエンドロール』(2021年/エイベックス・ピクチャーズ)B
48『ばるぼら』(2020年/日、独、英)C
47『武士道無残』(1960年/松竹)※
46『白い巨塔』(1966年/大映)A
45『バンクーバーの朝日』(2014年/東宝)A※
44『ホームランが聞こえた夏』(2011年/韓)B※
43『だれもが愛しいチャンピオン』(2019年/西)B
42『ライド・ライク・ア・ガール』(2019年/豪)B
41『シービスケット』(2003年/米)A※
40『6才のボクが、大人になるまで。』(2014年/米)A※
39『さらば冬のかもめ』(1973年/米)A※
38『30年後の同窓会』(2017年/米)A
37『ランボー ラスト・ブラッド』(2019年/米)C
36『ランボー 最後の戦場』(2008年/米)B
35『バケモノの子』(2015年/東宝)B
34『記憶屋 あなたを忘れない』(2020年/松竹)C
33『水曜日が消えた』(2020年/日活)C
32『永遠の門 ゴッホが見た未来』(2018年/米、英、仏)B
31『ブラック・クランズマン』(2018年/米)A
30『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019年/米)A
29『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/東映)C
28『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』(1969年/東映)B
27『徳川女系図』(1968年/東映)C
26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B
4『宇宙戦争』(1953年/米)B
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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